院長コラム
胸やけがあるのに「胃カメラを受けて逆流性食道炎ではありません」と言われたあなたへ──“機能性胸やけ”という疾患概念があります
胸やけがあるのに、検査では異常なし?
「胸が熱く焼ける感じがする」「喉の奥がヒリヒリする」…でも内視鏡検査(胃カメラ)を受けたら「異常なし」。薬を飲んでも症状は一向に改善しない・・・・そんな経験はありませんか?
そのような方の中に、機能性胸やけ(functional heartburn)の方がおられます。
機能性胸やけ(Functional heartburn)
機能性胸やけとは、逆流性食道炎と似た症状があるにもかかわらず、内視鏡検査や胃酸測定で異常が見られない状態です。
つまり、「異常はないが、自覚症状が続いている状態」です。
機能性胸やけの特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
内視鏡(胃カメラ)で食道に炎症がない | 食道炎や潰瘍は認められない |
酸逆流が原因でない | 24時間pHモニタリング、酸逆流はない(少ない) |
PPI(胃酸抑制薬)が効きづらい | 逆流性食道炎の薬では症状が改善しない |
ストレスが関与 | ストレスが症状を悪化させる |
類似疾患との違い
病名 | 主な原因 | 内視鏡所見 | PPIの効果 |
---|---|---|---|
びらん性逆流性食道炎 | 胃酸の逆流 | 食道炎あり | 効果あり |
非びらん性(逆流性過敏性食道炎) | 胃酸逆流 | 食道炎なし | 効果あり |
機能性胸やけ | 知覚過敏・中枢感作 | 異常なし | 効果乏しいことが多い |
メカニズム
- 食道の知覚過敏
わずかな刺激でも「焼ける」「痛い」と感じやすくなる - 脳と腸の連携異常(脳腸相関)
ストレスや不安によって痛みや違和感が誇張される - 中枢神経の感作
長期の症状によって神経が過敏な状態が継続される
過敏性腸症候群(IBS)機能性ディスペプシア(FD)と似た発症メカニズムと考えられています。
診断と検査
- 内視鏡検査(胃カメラ):食道炎(びらんや潰瘍)がないことを確認
- 24時間pHモニタリング:胃酸逆流の有無を確認
- 症状日記:食事・ストレスとの関連性を把握
上記の検査で「逆流が原因でない」と判断された場合、機能性胸やけの可能性が高くなります。
治療の選択肢
アプローチ | 内容 |
---|---|
薬物療法 | 抗うつ薬/抗不安薬 |
心理療法 | 認知行動療法、マインドフルネスなど |
生活指導 | 睡眠改善、カフェインやアルコールの制限 |
食事管理 | 食後すぐ横にならないなど、逆流性食道炎に準じた対策も有効 |
機能性胸やけは症状が疾患概念
機能性胸やけは脳腸相関バランスの崩れから生じる痛みや不快な症状です。
薬だけでなく、心身の整え方も含めた包括的なアプローチが必要です。