院長コラム

鎮痛薬・その他の薬と便秘

多くの方が処方を受けたり、薬局で変えるお薬の影響で便秘になることがあります。今回は「痛み止め(鎮痛薬)」や「日常的に使う薬」による便秘を紹介します。

オピオイド鎮痛薬(モルヒネ・オキシコドンなど)

がんの痛みや慢性疼痛で使われる「オピオイド系鎮痛薬」は、便秘がほぼ必発です。

  • 腸のμ(ミュー)受容体に作用して腸の動きを抑え、消化管からの水分吸収を増やす
  • 下剤を使っても効きにくいことが多い
  • オピオイド誘発性便秘に特化した薬(ナロキソン製剤、ナルデメジン)を使用する

オピオイドを使うときは、便秘対策を同時に始めるのが原則です。

鉄剤

貧血の治療で使う鉄剤(特に経口の鉄剤)は、便秘をよく起こします。

  • 腸で吸収されなかった鉄が腸内環境を変化させ、便を硬くする
  • 錠剤の種類を変えたり、静注製剤に切り替えることで改善する場合もあります

制酸薬(アルミニウム含有薬)

胃薬の一部に含まれる「アルミニウム」は腸の動きを抑え、便秘を起こします。

  • アルミニウムとマグネシウムを組み合わせることでバランスを取る工夫も行われます

抗ヒスタミン薬・制吐薬

  • 抗ヒスタミン薬(アレルギー薬、酔い止め)
    抗コリン作用により便秘を起こすことがあります。
  • 制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドンなど)
    腸の運動に影響を与え、便秘や下痢のどちらも起こる可能性があります。

まとめ

  • オピオイド鎮痛薬 → 副作用対策薬を使用する
  • 鉄剤 → 製剤の工夫、投与経路の変更
  • アルミニウム含有制酸薬→Mg製剤を考慮する
  • 抗ヒスタミン薬、制吐薬 → 抗コリン作用のため対症療法

薬による便秘は、生活習慣だけでは改善が難しいことがあります。
「薬を飲み始めてから便秘が悪化した」と感じたら、ぜひ主治医に伝えてください。