院長コラム
肝機能が少し高いだけ、それってダイジョブ?MASLDって知っていますか?
「肝機能ちょっと高めですね」それって本当に「様子見」でいいの?
健診後の診察室でよく行われる会話——
「ALTがちょっと高めですね」「γ-GTPが気になりますね」→「お酒のせいでしょうか?」「飲み会がつづいていたのでそのせいだと思います。節制します様」…と立ち上がり、静かに診察室を後にされる患者さんが多いです
しかし、こうした「軽度の肝機能異常」の裏には、近年注目されている*現代型肝臓病が隠れている可能性があります。
日本人の中で潜在的MASLDは2000万人?
肝機能異常(ALTやγ-GTP上昇)に加えて、超音波検査で脂肪肝を指摘されたことのある人は、実は MASLD(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease)の可能性があります
国内データをもとにした推定(厚労省や研究データ等)
・日本人成人の約25〜30%に脂肪肝が存在
・MASLDの多くに肥満・糖尿病・高血圧などの代謝異常を合併している
・日本国内だけでも2000万人以上がこれら潜在的MASLDの可能性がある
これは B型肝炎(約70万人)やC型肝炎(約50万人未満)とは比較して桁違いの規模です。
潜在的MASLDのほとんどは無症状もしくは軽度異常
MASLDは基本的に無症状で、基本は健診で拾い上げがなされていることの多い疾患です
・肝機能のわずかな異常(ALT40前後)
・超音波検査で脂肪肝疑い(可能性あり)
・要精査となっても再検査に来院する人は少ない
非専門医が最初に気づけて、啓蒙できるかがとても重要になります。
気づける非専門医に巡り合う重要性
かつては「肝炎ウイルスを見逃すな」と言われた時代がありました。現代は「脂肪肝を軽く見るな」と言い換えられると思います。どちらも肝臓がんのリスクですが、脂肪肝から発がんする人が圧倒的に増えている現代においては、脂肪肝を見逃すことは少ないが、リスクを説明して適切にフォローすることの重要性を伝える医師や医療機関が不足していることが一番問題なのかもしれません」。
肝炎ウイルスは拾いきってしまった疾患、MASLDは今後も拾い続けなければならない疾患です。
非専門医の診療の中に、次世代の肝疾患の種が潜んでいます。