院長コラム

なぜ肝臓だけが“脂肪をためてがんになる”のか?〜内臓脂肪のつきやすい場所、つきにくい場所から考察

脂肪のつきやすい臓器、つきにくい臓器

脂質や余分なカロリーは、私たちの体に「中性脂肪」という形で蓄えられます。
では、体内の臓器のうち、どこに脂肪がつきやすいのでしょうか?
実はみなさんご存知の肝臓だけではありません・・・

内臓脂肪がつきやすい場所

肝臓
腸間膜(腸のまわり)
腎臓周囲脂肪
心臓周囲脂肪(心膜脂肪)

内臓脂肪がつきにくい場所


骨格筋(過剰になるとインスリン抵抗性へ)
脾臓、肺などの非代謝臓器

肝臓はカロリーの貯蔵&調整タンク

私たちが食事でとった糖質や脂質は、小腸から吸収され、まず肝臓に運ばれます。肝臓はこれらの栄養分を以下の形へ変換してリアルタイムで供給と貯蔵処理しています。
肝臓は唯一脂肪を自ら合成・蓄積・放出できる脂肪管理センターとしての役割を担っており、まさに生化学の巨大工場とも言える存在です。

・グリコーゲン(短期貯蔵)
・中性脂肪(長期貯蔵)
・血中への放出(エネルギー供給)

カロリー過多状態が続くと使いきれない分を「中性脂肪」にして自らに蓄え始め、いわゆる脂肪肝を形成します。

なぜ肝臓だけが炎症 → 線維化 → がんへと進行するのか?

他臓器には脂肪がついても、がんまで進行することは少ないです。実際に腸管膜、腎臓周囲、心臓周囲にがんが発生することはほとんどないといっても過言ではありません。
ではなぜ肝臓への脂肪蓄積は「発がん」へとつながるのでしょうか?

発がんにつながる肝臓だけが持つ4つの特徴

・門脈血流(糖・脂質と一緒に腸管からダイレクトに細菌内毒素が流入、常に炎症が起きやすい背景あり
・炎症性サイトカイン(脂肪の蓄積・酸化・分解の過程で酸化ストレスや炎症性サイトカインが発生しやすい)
・再生力(ダメージ → 修復 → ダメージの繰り返しが、異常な再生(癌化)につながりやすい)
・免疫寛容(異物を許容する免疫の緩衝帯の役割を果たすため、がん細胞を見逃しやすい)

脂肪肝はがん予備軍ではないが、無害でもない。

肝臓は様々なストレスにさらされながら、人体に大事な脂肪の貯蔵庫の機能を維持しています。
過剰に脂肪が蓄積した結果起こる炎症(火事)もなんとか全身に広げないように、自らの傷を強い再生力で日々治しながら頑張って働いています。
一方でこの驚異の再生力や免疫寛容力が、がん化につながるというパラドックスを有しています。
これこそが肝臓という臓器の“もろさ”でもあります。
肝臓の多様かつ不思議な力によって人間の身体が支えられています。
日々全力で身体を守っている肝臓に感謝して、労った生活習慣をぜひ身につけたいですね。