院長コラム
「私は痩せているのに脂肪肝?」「太っていないから大丈夫ではない」日本人に多い痩せ型脂肪肝(lean MASLD)
太っていないのに脂肪肝“見えないリスク”
BMIは22、ウエストもそこまで太くない、糖尿病もない。
そんな患者に「脂肪肝がありますね」と伝えると、驚かれることは少なくありません。
実はこの非肥満型脂肪肝(lean MASLD)は、日本人を含むアジア人に非常に多いことが明らかになっています。「脂肪肝=メタボ」という固定観念は、現代では通用しません。
数字で見る日本のlean MASLDの実態
- 日本人成人の約25〜30%が脂肪肝を有するとされており、
その中でおよそ30〜40%が“非肥満”(BMI<25)に該当するという報告もあります。 - 糖尿病がなく、BMI正常なのにALT高値、脂肪肝を指摘されるケースは日常診療で頻出します。
日本人の脂肪肝患者の3人に1人以上は非肥満のため、見た目やBMIだけでは絶対にスクリーニングできないと言えます
なぜ日本人にlean MASLDが多いのか?
理由は以下のような民族的・生活習慣的背景にあります:
| 要因 | 説明 |
|---|---|
| 内臓脂肪蓄積のしやすさ(体質) | アジア人は同じBMIでも欧米人より内臓脂肪が多い傾向。 |
| 筋肉量の少なさ | 特に下肢筋量が少ないため、インスリン抵抗性が起きやすい。 |
| 糖質中心の食文化 | 高GIな主食(米、パン)+低たんぱくな食事構成が脂肪肝を助長。 |
| 遺伝的リスク(PNPLA3変異など) | 肝臓に脂肪をため込みやすく、NASH進展リスクが高い。 |
これらの要素が複雑に絡み合い、太っていなくても肝臓にだけ脂肪がたまり、炎症が進行していくというのが、lean MASLDの本質です。
Lean MASLDが見落とされやすい理由
- BMI正常=安心という思い込み
- ALT 30〜50程度の軽度上昇は正常範囲と判断されることが多い
- 脂肪肝=経過観察の慣習
非肥満型脂肪肝は拾い上げられる機会を失い、放置されたまま進行していきます。実施に肝硬変 や 肝がんの状態で受診して、振り返ると非肥満型MASLDが原因ではないかと考察される症例が多い印象です。
非肥満MASLDを見逃さないために
| サイン | 実際の行動 |
|---|---|
| ALTが30〜50台で持続高値 | 再検査・生活習慣聴取 |
| エコーで脂肪肝あり | BMIにかかわらず、生活習慣指導 |
| 軽度の高血圧、脂質異常あり | 代謝異常の早期兆候として定期フォロー |
まとめ
- 非肥満型脂肪肝(lean MASLD)は日本人に非常に多い疾患である
- 見た目・体重だけで判断しない
- ALT軽度上昇や脂肪肝所見は“メッセージ”