院長コラム

進行の早い 痩せ型脂肪肝、日本人に潜む遺伝的リスク

「やせているのに脂肪肝」珍しくない、むしろ日本人らしい脂肪肝

「BMIは正常、でも肝臓に脂肪が…?」
「脂肪肝は太ってる人の病気じゃないの?」

健診や外来でこうした検査異常と見た目とのギャップを感じる場面は少ないないはずです。
実は、日本人を含む東アジア人では、非肥満型脂肪肝(lean MASLD)が非常に多く見られることが知られています。なぜこのようなギャップが起こるのでしょうか?
その背景には、体質や生活習慣だけでは説明しきれない“遺伝的リスク”の存在が隠れています。

遺伝子が脂肪肝を決める?PNPLA3

近年最も注目されている脂肪肝関連の遺伝的リスクが、PNPLA3(patatin-like phospholipase domain-containing protein 3)という遺伝子変異です。

PNPLA3変異(I148M)

  • 肝臓に脂肪をためやすくする
  • 痩せているのに、脂肪肝が軽度なのにインスリン抵抗性あり
  • 脂肪肝が進行しやすい

日本人は肝臓に脂肪をためやすい遺伝子を多く持つ

実際、PNPLA3 I148M遺伝子変異を持つ人の割合は、欧米人で約25〜30%に対し、アジア人では40〜50%以上に達するという報告されています。つまり、見た目は痩せていても、肝臓に脂肪をためやすい体質の人が、日本には非常に多いということになります。

PNPLA3遺伝子の変異は、脂肪肝の進行リスクも上昇する

PNPLA3遺伝子の変異をもつ人は、ない人と比較して脂肪肝→非アルコール性脂肪肝炎→肝線維化→肝硬変→肝がん(HCC)への進展が早いと報告されています。つまり、見た目にはやせていても、脂肪肝から肝硬変、肝がんまでが早く進行するタイプであるということが言えます。

遺伝子検査のできない現場で大事なサイン

PNPLA3などの遺伝子検査は保険適用がないため、病院で検査することはできません。
そのためlean MASLDを疑うサインを見逃さないことが、何より重要です。

  • 非肥満(BMI正常)かつエコーで脂肪肝
  • ALT 30〜50程度が持続
  • 家族歴に肝疾患・糖尿病がある

見た目に惑わされない

  • 日本人は脂肪が肝臓にたまりやすい遺伝子を持つ人が多い
  • 痩せ型脂肪肝(隠れ脂肪肝)に注意
  • 遺伝的背景を想像する視点が鍵