院長コラム
運動中の腸トラブル、その正体は?
― 腸管虚血と“脇腹痛”のメカニズムを解明 ―
なぜ、走ると“お腹が痛くなる”のか?
ジョギングやマラソン中、突然「脇腹がキリキリ痛む」――
そんな経験、ありませんか?
これは俗に「ランナーズ・サイドステッチ(Runner’s Side Stitch)」と呼ばれ、腹膜や横隔膜の一時的な刺激や虚血が原因と考えられています。
特に次のような要素が影響します:
- 食後すぐの運動(消化器に血流集中)
- 呼吸が浅くなる(横隔膜の過緊張)
- 姿勢の崩れ(体幹バランス低下)
- 腸内ガス・便・水分の刺激
ですが、単なる「脇腹のけいれん」ではなく、深刻な腸管虚血の予兆となることもあります。
運動時の“腸管虚血”とは?
激しい運動時、筋肉に多くの血流が必要となるため、消化管への血流が相対的に減少します。
この状態が続くと、「腸管虚血(intestinal ischemia)」という状態に近づきます。
特徴的な症状
- 下腹部の痛み
- 便意や下痢
- 血便や粘液便(重症例)
- 脇腹・みぞおちの圧迫感
特にマラソンやトライアスロン、長時間の運動では、
- 水分・電解質不足
- 腸の振動(物理刺激)
- 緊張による交感神経優位
が加わり、腸のバリア機能も低下しやすくなります。
予防のカギは ?
| 対策 | 解説 |
|---|---|
| 食事タイミングの調整 | 最低でも運動の2〜3時間前までに食事を終える(特に脂質・食物繊維の多いもの) |
| 水分・電解質の補給 | 汗で失われるナトリウムや水分を小まめに補給。胃腸を冷やさないことも重要。 |
| 呼吸と体幹の安定 | 横隔膜や体幹の使い方を意識した腹式呼吸や体幹トレーニングが効果的。 |
| プロバイオティクスの活用 | 腸内環境を整えることでバリア機能を高め、炎症を抑えることが示唆されている。 |
| 慣らし運動(ウォーミングアップ) | 急な血流シフトを避け、ゆるやかに運動に入ることで腸への負担を軽減。 |
医療現場で注目される腸内バリアとアスリート腸の関係
腸管は「第二の脳」とも呼ばれ、免疫・ストレス耐性・疲労感と密接に関係しています。
運動による腸管バリアの破綻(リーキーガット)は、
- 慢性的な腹部不調
- 全身の炎症マーカー上昇
- パフォーマンス低下
の原因になる可能性があるため、運動強度が高いほど腸ケアが重要とされています。
脇腹の痛みは体からのサイン。
腸はパフォーマンスを支える土台であり、
無理な食事・水分管理・呼吸が続けば、腸は悲鳴を上げます。
特に持久系の運動では、腸の血流とバリア機能を守ることが、
「怪我をしない、病気にならない、続けられる」体づくりに繋がります。