院長コラム

Runner’s下痢の正体

「走るとお腹が痛くなりトイレに駆け込んだ」…誰もが一度は経験する悩み

長距離ランナーの間で「走っている時やレース直後にトイレに駆け込む」という経験をお持ちの方がおられるのではないでしょうか?この現象、「運動誘発性下痢(exercise-induced diarrhea)」と呼ばれ生理的現象の一つです。

原因:腸への血流が減る「腸管虚血」

走っている最中、私たちの身体は筋肉へ大量の血液を送るため、内臓の血流を意図的に減らします。
その結果、腸への血流が一時的に減少(虚血)するため、粘膜がダメージを受けやすくなるのです。

この状態が長引くと、腸の粘膜が弱くなり、吸収障害・粘液分泌異常・蠕動の乱れが起こり、結果として下痢や腹痛を引き起こします。

原因2:振動ストレスと物理的刺激

ランニングの上下動や腹圧の変化が腸に物理的な刺激を与えることで、腸の動き(蠕動運動)が過剰になり、便意を誘発することがあります。

原因3:糖質・脂質・カフェイン摂取とタイミング

マラソン前やマラソン中に摂取するエネルギージェル、スポーツドリンク、チョコバーなどの補給食に含まれる果糖(フルクトース)、人工甘味料、カフェインが腸を刺激して下痢を誘発する場合があります。特に高負荷の運動中には相対的に腸管虚血に陥っているため、消化が追いついていないため下痢しやくなります。

原因4:ストレスと自律神経

レースの緊張、不安、プレッシャーなどの精神的な要因は自律神経の調整に大いなる影響を与え、結果として腸蠕動の不安定さ、すなわち急な便意や下痢につながることがあります。これは「下痢型過敏性腸症候群(IBSーD)」に近いメカニズムです。

Runner’s腸への対策

対策内容
食事のタイミングレース・練習3〜4時間前までに消化の良い食事を終える。
水分と電解質の管理脱水による腸虚血を防ぐため、水分とナトリウム補給を計画的に。
プロバイオティクスの活用炎症抑制のためビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌などを日常的に摂取する
ストレス対策自律神経を安定させる呼吸法が有効。
練習の活用徐々に距離や時間を伸ばしながらのトレーニング

腸は走りのパフォーマンスを左右する

ランナーにとって、お腹の調子を整えておくことは、タイム管理と同じくらい大切なセルフモニタリングかもしれません。