院長コラム
アルコールによる、目に見えない腸内環境ダメージ
「飲みすぎは肝臓に悪い」とよく言われますが、実は腸もかなりのダメージを受けています。
アルコールは口から入り、胃腸へと進む過程でさまざまな障害を引き起こします。
小腸はアルコールの“毒素”にさらされる最前線
小腸は栄養吸収を行う大切な場所ですが、アルコールの影響で以下のことが起こります
- 粘膜バリア機能が損なわれる
→ 炎症性サイトカインの産生が増える - ビタミン・ミネラルの吸収低下
→ アルコール常習者はビタミンB群、葉酸、亜鉛などの欠乏が潜在的に隠れています。 - 絨毛(じゅうもう)の萎縮
→吸収上皮である 絨毛が萎縮して短くなることで吸収面積が減少します。このことで十分に栄養や微量元素を吸収できなくなります。
結果として倦怠感、貧血、免疫力低下など、「腸とは一見無関係なさそうな不調」が現れてくるのです。
大腸では、水分吸収や消化管運動への影響がでます
大腸は主に水分吸収を行っていますが、アルコールの影響で以下のことが起こります
- 粘膜の透過性が亢進(リーキーガット)
- 炎症を起こす悪玉菌が増加
飲みすぎた翌日、下痢になるという経験がある方は多いはずです。これは腸内のバランスが一時的に崩れて、慢性化すると下痢・便秘が繰り返されたり、お腹にガスがたまりやすくなります。
腸内フローラを乱す“飲酒習慣”の恐怖
腸内フローラ(腸内細菌叢)は、消化・吸収だけでなく、免疫・脳・代謝にまで影響することがわかっています。アルコールは腸内フローラのバランスに悪影響を与えます。
- 善玉菌(ビフィズス菌など)の減少
- 悪玉菌(バクテロイデス、クロストリジウム属)の増加
アルコール代謝によって生じるアセトアルデヒドは腸内細菌にも悪影響を与え、腸管バリアを壊して腸内毒素(LPS)が門脈に沿って全身に運ばれることで慢性炎症を誘発します。結果として炎症性腸疾患・脂肪肝関連疾患・2型糖尿病などの誘因になると言われています。
腸の乱れは全身病の始まり
腸内フローラが乱れてアンバランスになる(ディスバイオーシス)と、以下のような全身疾患の一因となる可能性が報告されています
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(MASLD)
- 動脈硬化性病変
- 心血管疾患
- アルツハイマー型認知症
- 自己免疫疾患(リウマチ、クローン病など)
飲酒後ケア
お酒を完全にやめることが難しい方も、以下のような方法で腸のケアを心がけると良いでしょう。
- 食物繊維・発酵食品を多めに摂取
- プロバイオティクス(乳酸菌など)の摂取
- プレバイオティクス(オリゴ糖、食物繊維)の摂取
- 週に1〜2日は断酒日を設ける
あなたの便通の乱れ、肌荒れ、疲労感は、毎晩の晩酌のせいかもしれません。
お酒を楽しむなら、腸の声にも耳を傾けてみませんか?