院長コラム
コレステロール値、健診でひかかっていませんか?
健診の季節ですね。
去年と比べて体重が増えたな~、腹囲が増えたって言われて、そう言えば、最近食事が美味しすぎて食べ過ぎ、飲み過ぎ、お菓子の量が増えたかなと心当たりがある方も多いのではないでしょうか?
人間の体は体重増加つまり肥満になると脂肪酸を肝臓や筋肉に取り込むホルモン「インスリン」の作用が落ちるため、脂肪酸はいつまでも血液中に残ります。脂肪酸は3つ集まると中性脂肪と呼ばれる物質になるため、結果として、血液中の中性脂肪の値が異常となり血液検査にひっかかるようになります。中性脂肪血症が高い状態が続くと、やがて(コレステロールを肝臓に戻す働きのある)善玉HDLコレステロールが下がって低HDLコレステロール血症となります。
コレステロールは健診でもよくひっかかる項目で、機能性食品やサプリメントの開発も活発です。
多くは、牛乳、卵、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、肉などに多く含まれるコレステロールの摂取過剰が原因です。
健康な状態(肥満なし、高LDL血症なし)であれば、コレステロールを含む食事を多少過剰摂取しても、余分な分は肝臓内に取り込み血中のコレステロールを一定に保たれます。
ただ長期間、コレステロールが高い状態が続くと、コレステロールを取り込む受容体の働きの低下して、正常な状態を維持できずに発症します。
高LDLコレステロール血症(悪玉コレステロールが高い)が数年から10年以上続くと次第にLDLコレステロールは血管の壁に付着して、プラークと呼ばれるものが貯まるようになります。
プラークが長期にわたり付着した状態が続くと動脈硬化が進行して、血管が固くなったり、狭くなったりします。プラークの怖いところは、最初は無症状でも次第に大きくなり血流を妨げるようになると、ある日突然、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の症状が出現することです。ひとたび脳梗塞を発症すれば、これまで可能であった日常生活がひとりではできなくなることもあります。
動脈硬化のリスク因子には、自己管理により改善できるもの(肥満、喫煙、運動不足)、できないもの(加齢、閉経)があります。予防、ならびに対策をする上で最も重要な因子は、肥満があるか、肥満がないかです。
肥満(メタボ)の場合は、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低いと診断されることが多いです。減量(現在の体重から3%減量を目標)、カロリー制限、魚・大豆・野菜摂取、定期的な運動、減塩、節酒が有効ですので、生活習慣を見直し、自分で取り組めば良いことがはっきりしています。
一方で肥満なし(やせ、非メタボ)で高LDLコレステロール血症と診断されている場合は、減量は有効ではありません。運動や食事療法を実施しても効果は期待できないので、食事や運動をすれば下がるだろうと自己診断せずに必ず医師へご相談ください。
また自分は若いから大丈夫と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、家族歴がある方は遺伝性の場合があります。この場合、肥満(メタボ)の高LDLコレステロール血症とは比べ物にならないぐらいの動脈硬化のリスクが潜んでいます。放置していると30~40代の若年で心筋梗塞、脳梗塞を発症することも珍しくありません。また家族歴がない方でも、代謝異常(糖尿病や甲状腺疾患)によりコレステロールが高い場合もあります。この場合は原因となる病気を治さないと、コレステロールは下がりません。ぜひ医療機関へ受診して相談しましょう。
動脈硬化は数年から10数年でわからないうちに進行して、やがて大きな病気(心筋梗塞、脳梗塞、動脈瘤、末梢動脈疾患、慢性腎臓病)を引き起こします。
医師に勧められたお薬は続けないとこれらを予防することはできません。
発症したから治療するのは、得策とは言えません。
毎年、健診でコレステロールでひっかかっているという方は、ぜひ医療機関へ受診しましょう!。