院長コラム
内臓脂肪と異所性脂肪 悪いのは量より場所
内臓脂肪は悪い、もっと進んだ異所性脂肪はもっと悪い?という疑問が湧いてきます。
どちらも共通する「あふれ脂肪」現象
人間のからだでは、本来脂肪は皮下や筋肉内に少量ずつ蓄えられ、エネルギー源として活用される仕組みが備わっています。
しかし、食べすぎ、運動不足、ホルモンバランスの乱れによりエネルギーが余ってくると、脂肪細胞は膨らみ、やがてためられなくなりあふれ現象(spillover)が起きます。
このとき、内臓脂肪として蓄えらなくなると余分な脂肪酸が血中に放出されて本来脂肪がついていない臓器(肝臓・膵臓・心臓・筋肉)などに沈着していく。これが「異所性脂肪」です。
メカニズムは炎症とインスリン抵抗性による悪循環
脂肪が増える
↓
脂肪細胞から炎症性サイトカイン(TNFα・IL-6など)が放出
↓
インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)
↓
血糖・中性脂肪上昇
↓
肝臓・膵臓・血管に脂肪沈着が進行
全身の代謝異常を生むメカニズムは脂肪肝も異所性脂肪も同じです。
違いは溢れた脂肪の行き先と可逆性があるか
| 項目 | 内臓脂肪 | 異所性脂肪 |
|---|---|---|
| 脂肪の蓄積場所 | 腸間膜・腹腔内 | 肝臓・膵臓・心臓・筋肉など |
| 原因 | エネルギー過剰 | あふれ脂肪 |
| 炎症・ホルモン分泌 | 全身障害(IL-6、TNFα) | 全身+局所障害 |
| 可逆性 | 高(減量・運動で改善) | 低(臓器内沈着は抜けにくい) |
| 臨床的意義 | 代謝障害(初期) | 代謝障害+臓器障害(終末像) |
どちらが悪い?
上記を単純に比較すると、異所性脂肪の方が直接的な臓器障害を起こしやすいので悪いと言えます。
一方でどちらも脂肪が本来の場所に収納できなくなった状態そのものが問題なのです。
脂肪は正しい場所にあるときは生命維持に不可欠なエネルギー源ですが、本来つかない場所に脂肪がつくと慢性炎症から、代謝異常として糖尿病・脂肪肝・動脈硬化が進展したり、がんの発症に関連していきます。
悪いのは脂肪そのものではなく、脂肪の迷子
内臓脂肪も異所性脂肪も、どちらもエネルギーが行き場を失ったSOSサイン。脂肪が悪いわけではなく、脂肪を正しく消費したり、正しい場所に貯められないことです。でも、どちらまだ戻せる段階と考えると手遅れではありません!