院長コラム
ヘリコバクターピロリ菌と胃がん
皆様は、健診をどういう機会として捉えていますか?
日頃の生活習慣の通知簿?メディカルチェック?メンテナンスの目安?それとも何となくですか?
「健診」「予防医学」でグッグってみると、なんと多くの健診センターが「健診予防医学」「予防医学健診」と名乗っているかがわかります。
つまり、健診と予防医学には密接な関係性があるということを意味しているものと思います。
皆様に関心が高い「がん」。できればなりたくない「がん」。
予防できる「がん」はないのでしょうか?
原因がはっきりしていてワクチンや薬で、未然にリスクを排除してがんになるを回避できる可能性があるのは、日本人の「がん」の原因として約20%を占める感染症です。 具体的には肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ピロリ菌です。
胃がん(ヘリコバクターピロリ菌)
子宮頸がん(ヒト・パピローマウイルス)
肝がん(B型、C型肝炎ウイルス)
今回は胃がんがテーマーです。
日本人の総がん患者の中で、胃がんの罹患数(かかる人の数)は全がんの中、第2位、死亡者数は第3位です。リスクとして喫煙や高塩分食など生活習慣もありますが、大半はヘリコバクターピロリ菌感染による発がんです。
ヘリコバクターピロリ菌は幼少期(5,6歳まで)に初感染(急性感染)して、胃に長期に住み続けます。慢性的、持続的に感染した結果、胃固有の上皮が萎縮(粘膜が薄くなること)、一部が再生する時に腸上皮に置き換えられます(ピロリ菌は基本胃粘膜にしか住めないので、住める範囲をどんどん小さくする生体防御機構なのかもしれません)
こうして住み続けるピロリ菌の直接作用、ならびに再生を繰り返すうちに発生する遺伝子異常(正常な細胞を再生させずに誤ってがん細胞を作ってしまう)の結果、腸上皮に置き換わった粘膜から年率0.1~1.7%(萎縮粘膜から年率0.1~0.5%)発がんすると報告されています。
ヘリコバクターピロリ菌を長い間住まわせる(保菌する)ことはひとつもいいことはないので、できるだけ早い時期に排除(除菌)する必要があります。
ただし、除菌したら終わりではありません。
ピロリ菌に感染したことがある胃(既感染)は一度も住んだことのない胃粘膜(未感染)と比較して「がん」になるリスクは高い状態と言えます。
除菌後も定期的な胃の検査(胃カメラ、胃バリウム検査)がすすめられます。
ご家族にピロリ菌を除菌した人がいる方、胃がんにかかったことがある方は、ピロリ菌に感染しているリスクが高いと言われています。ご心配な方は、ぜひ健診や外来で受診の際にぜひご相談ください。