院長コラム

ナイロンよりもかゆい速乾ウェア  スポーツウェアとかゆみのメカニズム

運動中に汗をかくて肌に張り付く感覚が嫌であえて「速乾ウェア」を選ぶ人は多いでしょう。
ところが最近、「スポーツウェアを着るとかゆくなる」という訴えの方が増えています。
化学繊維の中、特に高機能速乾素材でかゆみを訴える人は想像以上に多いのです。

速乾ウェアは、汗をすばやく蒸発させるように水分を吸収しない疎水性の繊維構造を持ち、汗が繊維の表面を移動して外気に放散される「毛細管現象」を利用しています。

この構造は通気性と速乾性に優れていますが、同時に皮膚の水分を奪いすぎるという落とし穴があります。汗と一緒に角層の水分も蒸発してしまい、皮膚が乾燥してC線維が露出しやすくなるのです。

さらに速乾ウェアは密着性を高めて伸縮性を持たせるため、ポリウレタンやスパンデックスが混紡されています。運動中は皮膚との間でずれ刺激が発生して微妙な摩擦を起こしやすく、皮膚神経の機械受容体を刺激して軽度の炎症反応を起こします。

加えて運動によって摩擦が増えると帯電した繊維が皮膚の上で小さな電気スパークを起こします。
この微弱な電気刺激が、かゆみ神経であるC線維を直接興奮させて、運動後も「ピリピリ」「ムズムズ」とした感覚が残ります。

特に運動直後にシャワーを浴びてすぐに服を着替える習慣がある人では、角層がふやけた状態のまま速乾ウェアを着ることで摩擦刺激が強まり、皮膚がマイクロレベルで傷つきやすくなります。
これが繰り返されると、「非アレルギー性皮膚炎」と呼ばれる慢性的なかゆみ状態に移行します。

対策として、肌とウェアの間に綿素材のインナーを1枚はさむこと。次に保湿です。
運動前に保湿剤を塗ると皮膚表面の電気抵抗が高まり、静電気の発生が抑えられます。
運動後は汗をきれいに洗い流してから再び保湿することで、乾燥と神経の興奮を防げます。