院長コラム
耳の加齢変化 ― 男性の方が難聴が多いって本当?
聴力は実は30代からすでに少しずつ衰え始めています。
聴力の老化(加齢性難聴)は、視力よりもわかりにくく、気づかないうちに進行します。
統計的には65歳を過ぎると、男女合わせて約半数が何らかの難聴を抱えると言われています。
テレビの音が大きくなったら“はじまりのサイン”
「最近テレビの音が大きくなった」「家族にテレビの音量を下げられる」こうした変化は、聴力低下の典型的な初期サインです。とくに高音域(子どもの声、電子音、女性の声など)から聞き取りにくくなるのが特徴で、言葉の輪郭がぼやけてきます。本人は聞こえているつもりでも、内容を理解するために脳が余分な労力を使っているため、会話の疲れや集中力の低下、さらには社会的な引きこもりにつながることもあります。
男性の方が難聴が多い ?これは“本当”
疫学データでは、男性の方が女性よりも難聴の発症率が高いことがはっきり示されています。日本や米国の大規模コホート研究では、
- 男性の有病率は女性の約1.5〜2倍
- 特に「高音域(4kHz以上)」の感度低下が早い
理由はいくつかあります。
- 騒音曝露(職業・趣味)
男性は若い頃から機械音、工場、交通、音楽など、強い音にさらされる機会が多く、これが内耳(蝸牛)への累積的なダメージになります。 - ホルモン差(エストロゲンの保護作用)
女性ホルモンのエストロゲンには、内耳の血流や神経細胞を守る抗酸化作用があります。
閉経前の女性はこの保護を受けているため、同年代男性より難聴の進行が遅い傾向があります。 - 循環・代謝リスクの差
高血圧、糖尿病、脂質異常など内耳の微小血管に悪影響を与える疾患の頻度が男性に多いことも一因です。内耳は微小血流障害に弱く、酸素不足が聴力神経の劣化を早めます。
30代からはじまる“静かな老化”
聴覚の加齢変化は
20代後半〜緩やかに始まり、
40代〜「高音が少し聞きにくい」
50代〜「雑音の中で会話が聞き取りづらい」
60代〜「全体的に音がこもる」
65歳 “半数が難聴”
聴覚を守るための3つのポイント
- “音疲れ”を感じたら耳を休ませる
長時間のイヤホン、音楽、工事音により内耳の有毛細胞が損傷を受けます。1日30分の「静寂タイム」を意識しましょう。 - 血流を保つ生活習慣
有酸素運動、減塩、禁煙、糖質のとりすぎを控えることが聴力維持につながります。 - 早期に聴力検査を受ける
耳鼻科での簡易聴力検査(純音聴力検査)や補聴器相談を早めに行うことで、聞き取る力を保つことができます。難聴を放置すると、認知機能の低下リスクが上がることも知られています。
テレビの音量を上げたくなったら、難聴のサインです。
男性は特に早めの耳のメンテナンスを心がけましょう。