院長コラム

番外 「いきみ」はなぜ悪い?

便秘になると、排便時に力いっぱい「いきんで」おられませんか?
実は体に大きな負担をかけています。
特に問題なのがいきみによって血圧が急激に上がり、心臓や脳の血管に強いストレスを与えることです。これは「バルサルバ現象」と呼ばれ、排便時に息を止めて腹圧を高めることで胸の中の圧力(胸腔内圧)が上昇し、心臓への血液の戻りが一時的に減るために起こります。

結果として心臓は一瞬「血が足りない」と感じて拍動を強め、反射的に血圧を上げてしまいます。
便が出たあとに血圧が急に下がることもあり、排便中の脳出血や心筋梗塞、排便後の失神発作は、このメカニズムによって説明されます。いきみの影響は一時的でも、毎日のように繰り返されることで慢性的なダメージになります。

また、強いいきみは肛門や直腸周囲の血流を圧迫していぼ痔や切れ痔の原因にもなります。
排便時に顔が赤くなるほど力む習慣がある人は、心臓や脳のみならず、肛門にとっても負担が大きいといえます。

予防するためには便を硬くしないことが基本です。
水分や食物繊維を十分にとり、毎日一定の時間にトイレに行く習慣をつけます。それでも硬い場合は、医師と相談して酸化マグネシウム等の処方を受けましょう。
排便時には息を止めず、口を少し開けてふーと吐くように腹圧をかけて、体をやや前傾させると排便がスムーズになります。

便秘は循環系全体に影響を及ぼす生活習慣病の一つです。
いきまずに出せることが、心臓や脳の健康を守る第一歩です。