院長コラム

夢のアンチエージング薬 No2(SGLT阻害薬)

アンチエージングについての話題です。
Nature Aging誌のオンライン版(2024年5月30日)で糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬が、老化細胞除去薬として作用することが報告されました。

以前のコラムでも述べた通り、加齢、ストレスによって組織に老化細胞が蓄積し、それによって引き起こされる慢性炎症が、加齢関連疾患の発症・進展に関わっているといわれています。

人間は蓄積した老化細胞を除去することで、病的な老化へすすんでいくことを抑制しています。

加齢に伴うストレスによって染色体損傷(染色体が損傷することでがんが発生しやすくなります)が発生すると、細胞は自らのがん化を防ぐため細胞分裂を停止して老化させます。

こうして組織に蓄積した老化細胞は、いつまでも組織に留まることがないように免疫系を活性化させて、自らが除去されるようにプログラムされています(自浄機構)。
しかしながら、何らかの原因でこの自浄機構が働かないと、老化細胞の蓄積が繰り返されて、組織に慢性的に炎症が持続して、加齢関連疾患の発症・進展につながります。

糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬(尿への糖分の排出することで、血糖値を低下させる)を投与により老化細胞の蓄積が抑制され、自浄作用が促進されることが、今回の動物実験で証明されています。

これまでの老化細胞除去薬は、抗がん剤として使用されているものが多く、副作用が懸念されて臨床的に使用できるものは限られていました。

SGLT2阻害薬は、糖尿病治療薬として広く普及している副作用の懸念も少ない、新しい発想のアンチエージング薬です。

今人間に応用できるかは未知ですが、新しい可能性が日本から示されたのは大変うれしい限りです。