院長コラム

十二指腸のふしぎ 粘膜バリアが症状を左右する

酸に「耐えられる腸」と「耐えられない腸」

消化管粘膜は常に、胃酸や消化酵素といった強い刺激に常にさらされています。
それでも通常は問題が起こらないのは、粘膜バリアと呼ばれる防御機構が働いているからです。
粘膜バリアは、粘液層、重炭酸分泌、上皮細胞同士のタイトジャンクション、粘膜血流、局所免疫などが一体となって成り立っています。

この粘膜バリアが保たれていれば、同じ酸曝露があっても刺激は最小限に抑えられます。
しかし、ストレス、睡眠不足、加齢、痛みどめの使用、炎症、感染などが重なると、粘膜バリアは徐々に壊されて弱くなります。
その結果、以前は問題なかった程度の酸でも、痛みや不快感として感じられるようになります。
これは、酸の量が増えたわけでもなく、酸が過剰になったわけではなく、守る力が低下した結果と考えると理解しやすいでしょう。

近年の研究では内視鏡(胃カメラ)で大きな異常が見られなれず、機能性ディスペプシアと診断されている患者さんの多くは、十二指腸の粘膜バリア障害が背景に存在していることが少なくないとされています。

粘膜バリアの状態は、現在の胃カメラでは見ることができません。

今後の医学の進歩でこれらが可視化されることを一医学者として強く期待しています。