院長コラム

脂肪肝はお酒だけの病気ではない

SLD・MetALD・ALDに分けた理由

これまで脂肪肝は、お酒を飲まない人の脂肪肝(非アルコール性)とお酒が原因の脂肪肝(アルコール性)という分け方で説明されることが多くありました。しかし最近、脂肪性肝疾患はSLD(脂肪性肝疾患)という新しい枠組みで整理されるようになっています。

SLDの特徴は、脂肪肝はアルコールの量だけで説明できない病気であることを前提にしている点です。
肥満、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常が強く関わり、お酒を飲むか飲まないかだけでは本質を見誤ることが分かってきました。

その中で、あえて
MetALD(代謝異常+ある程度の飲酒がある脂肪肝)
ALD(大量飲酒が主因の脂肪肝)
を分けたのには、はっきりした理由があります。

まず、現実問題として「全く飲まない人」と「少量〜中等量飲む人」を完全に分けることが難しい、という背景があります。多くの人は、「そこそこ飲む」生活をしています。その中で、肥満や糖代謝異常があると、少量〜中等量の飲酒でも脂肪肝が進行しやすくなることが分かってきました。
このタイプがMetALDです。

MetALDは、「お酒が原因なのか、体質や生活習慣が原因なのか」ではなく、両方が重なって肝臓に負担をかけている状態を表します。飲酒量だけを見ると「それほど多くない」と判断されがちですが、代謝異常があると肝障害の進行リスクは決して低くありません。

一方、ALDは、明らかに大量飲酒が中心となって肝障害が起こるタイプです。
アルコールそのものの毒性の影響が強く、禁酒が治療の大前提になります。
このタイプでは、生活習慣の改善だけでは不十分で、飲酒量を減らすこと自体が治療になります。

このように分類を分けた最大の理由は、治療の方向性を明確にするためです。
SLDという大きな枠組みの中で、「代謝異常が主なのか」「飲酒が主なのか」「その両方なのか」を見極めることで、何に優先的に取り組むべきかが分かります。

脂肪肝は、「お酒をやめれば大丈夫」「飲まないから安心」という単純な話ではありません。
お酒の量、体重、血糖、脂質、運動習慣など、複数の要因が重なって進行する病気です。

SLDという考え方は、原因探しではなく、今の自分の肝臓にとって何が負担になっているのかを一緒に考えるための新しい物差しです。
肝臓を守るために重要なのは、カテゴライズすることではなく、自分の生活を見直すために活かす視点です。