院長コラム
糖尿病の原因と治療方法
糖尿病はホルモンの一種であるインスリンの量が十分ではない状態(インスリン分泌不全)や十分に作用しない(インスリン抵抗性)ことで、血液のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。発症の原因により遺伝による1型、生活習慣(食べ物、運動習慣、環境因子)による2型があります。日本人などのアジア人は欧米人に比べて、インスリンの分泌が少ない(約半分)ため、もともと糖尿病になりやすいと言われています。
食事について
インスリンが出ていても、いつも食べ過ぎ、飲み過ぎではインスリンの分泌が追いつかなくなりやがてインスリンが不足します。低GI、低糖質の食品も売られていますが、特に糖質が多く含まれている食事は以下の通りです。
- ごはん、パン、麺などの主食
- 洋菓子、和菓子などのお菓子
- 甘いジュース
- 果物
- 血糖を急激に挙げないために、以下の対策が有用とされています。
1.GI値が低い食品を選ぶ
GI値とはグリセミックインデックスの略で、数値が高いものほど血糖値が上がりやすくなります。主食は特に「白より黒(食パン→全粒粉パン、白米→玄米、雑穀米、うどん→そば)」です。食物繊維が一緒に含まれるものは吸収が緩やかといわれていますので、ぜひ取り入れたい食材です。
- 玄米、七分づき米
- 全粒粉、ライ麦パン
- 十割そば
- かぼちゃ、芋類(じゃが芋、さつまいも、里芋など)
- とうもろこし
- くり
- 大豆以外の豆類(小豆、インゲン豆、おたふく豆など)
- 野菜
- 海藻
- キノコ など
- 野菜ファースト
食事の最初に食物繊維をとることで糖質の吸収を抑え、血糖値が緩やかに上がります。同じ食事の内容でも野菜やタンパク質から最初に食べるだけで吸収率が変わります。
2.PFCバランス
タンパク質、脂質、糖質のカロリーバランス(PFCバランス)が重要になります。ラーメンライスのように糖質×糖質は血糖値スパイクを起こしやすいので注意が必要です。
その他糖質だけでなく、脂質は摂りすぎによる肥満、内臓脂肪の増加、脂肪肝はインスリンの効きにくい状態になるので、食事全体の見直しが必要になります。お酒は適量であれば問題ありませんが、その際も糖質の少ないお酒を選びましょう(酎ハイ、果実酒などは糖質が多く含まれているので注意が必要です)。
運動について
運動不足はインスリンの効きを悪くします。摂取カロリーに対して消費エネルギーが小さい場合は体重増加にも繋がります。糖尿病のガイドラインでは週3-5回の有酸素運動を20-60分ほどするとよいとされており、比較的負荷の小さい有酸素運動でも十分効果があることが証明されています。
- ウォーキング
- 水泳
- 自転車 など
同時に筋肉を鍛えることで、ブドウ糖の消費量が増加、筋肉内への取り込みが良くなるため血糖値が改善すると考えられています。筋トレとなるとかなりハードルが高いので、スクワットや踵上げ程度から取り入れてみましょう。膝や腰が悪い方は、関節に負荷の少ない水泳、水中歩行が良いと言われています。特に水中歩行は有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされているためガイドラインで推奨されている運動方法です。
ただし、以下の方には運動療法がすすめられませんので主治医とご相談ください。
- 糖尿病のコントロールが悪い
- 糖尿病網膜症による眼底出血がある
- 腎不全がある
- 虚血性心疾患、心肺機能に障害がある場合
- 骨、関節疾患がある場合
- 急性感染症
- 糖尿病壊疽
- 高度な自立神経障害(転倒のリスクも大きいため)
肥満について
肥満、内臓脂肪が多い人、脂肪肝などはインスリン抵抗性(インスリンが効きづらい状態)のため、ますます血糖が高い状態が持続します。このことで糖尿病を発症しやすくなります。
加齢について
加齢と共にインスリンを分泌するすい臓は萎縮して機能が低下します。これによりインスリンの分泌量も減ります。また一般的に年齢とともに身体活動の低下、筋肉量が減るため、インスリンの効きずらくなるため、両方の原因で糖尿病を発症する人が増えてきます。
糖尿病の症状とは
血糖値が高い状態(高血糖)が進行すると以下のような症状を起こします。
- 多尿、多飲
- のどがかわく
- 悪心・嘔吐・めまい
- だるさ・疲れやすさ
- 意識障害 など
特に消化器症状(悪心、嘔吐)、腹痛、倦怠感、意識障害などは緊急の対応が必要になる可能性があるので、迷わず医療機関を受診することが大切です。無症状でも長年放置すると、以下のような臓器合併症の症状がでることがあります。臓器として障害されるのはし(神経)・め(眼)・じ(腎臓)です。
1.神経の症状
- 手足のしびれ、痛み
- 足がつる
- 手足の冷え など
中には神経が高度に障害されることで、感覚が無くなりしびれすら起きないこともあります。また自律神経が障害されて勃起不全、便秘などの症状がでることがあります。
2.目の症状
- 視力が低下する
- 眼がかすむ
- 失明 など
- 腎臓の症状
無症状ですが、腎機能が低下します(糖尿病性腎症)。知らない間に尿たんぱく(アルブミン)が漏れ出すことで、むくみが現れることがあります。
3.その他の症状
- もの忘れ
認知症の発症リスクは1.5倍と言われています。
生活習慣病は健康診断などの一般的検査によって早期発見が可能です。決して安易に考えず、検査値に異常があったり、少しでも不安を持たれたりする方はお早めの受診をお勧めします。