院長コラム
運動すると分泌される生理活性物質マイオカイン
運動で「分泌」?
運動すると骨格筋からマイオカインと総称される生理活性物質が分泌されることが知られています。
マイオカイン(Myokine)は、「筋肉(Myo)」と「作動因子(Kine)」を組み合わせた言葉です。運動して筋肉(骨格筋)を動かしたときに、筋肉細胞から分泌される生理活性物質(ホルモンのようなもの)の総称です。これまでに数百種類以上が見つかっており、代表的なものにイリシンやIL-6があります。
これらは単なる筋肉由来の副産物ではなく、肝臓・脂肪組織・膵臓・脳に作用する内分泌とよばれるシグナルです。
イリシンは白色脂肪細胞をエネルギーを燃やしやすい性質へ変化させ、慢性炎症に関わるマクロファージの働きを抗炎症方向へ導くと考えられています。
IL-6は炎症を悪化させる物質と言われており、専門分野である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)では病気を悪く作用があります。一方で運動によって分泌されるIL-6はこれらと性質が異なり、肝臓での過剰な糖新生(血糖値を上がる方向)を抑えて、筋肉や脂肪への糖取り込み(血糖値を下げる方向)を促進して、結果として血糖を下げる方向に働きます。
これらのシグナルにより運動後の血糖改善効果は24〜72時間持続するとされています。
この結果からわかることは、運動は毎日しなくても良い効果があるが、一定期間以上は空けすぎないことが重要であることが分かると思います。
運動量については、特別なトレーニングよりも日常生活の中で活動量を底上げすることが重要で、現状より1日20分、約2000歩の上乗せして最終的に8000歩前後(高齢者では6000歩)を目安にするのが勧められています。
一方で、運動の強度や種類については合併疾患により注意点があります。
糖尿病、特に糖尿病性網膜症がある方では高強度の運動や頭を下げる動作、糖尿病性腎症が進行している方では過度なレジスタンス運動(筋トレなど)を避け、低〜中強度までの有酸素運動を中心にします。
糖尿病性神経障害がある場合は運動時の靴選びが重要です。
また虚血性心疾患リスクが高い方では運動開始前の心機能の評価が欠かせません。
運動がもたらす効果は、体重減少効果に加えて、筋肉から放出されるマイオカインを介した臓器間クロストークです。これにより血糖を下がり、脂質代謝を改善して、慢性炎症を和らぎます。
運動に伴って起こる作用を理解すると、気負わない運動でもそれなりの目に見えない効果があることがわかってきて面白いと思いませんか?