院長コラム

沈黙の臓器膵臓 ~日本の最新データが教えてくれた現実

日本では多くのがんで治療成績が向上しています。胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどでは、早期発見や治療法の進歩により5年生存率は年々改善しています。

しかし、その中で今なお大きく取り残されている臓器があります。

それが膵臓です。

2026年に発表された、日本全国16地域・約183万人のがん患者を解析したCONCORD-3の最新データでは、2000~2014年において膵がんの5年生存率は6.4%から8.3%へわずかに改善したものの、依然として極めて予後不良であることが示されました。遠隔転移を伴う進行膵がんでは5年生存率は2%未満という厳しい現実も報告されています。

一方で、希望もあります。

膵がんが膵臓の中だけにとどまっている「早期」の段階では、5年生存率は約40%台まで改善していました。つまり、「見つかった時期」が、その後の人生を大きく左右する病気なのです。

膵臓が怖い理由は、症状がほとんどないことです。

初期には痛みもなく、健康診断でも異常が見つからないことがあります。背中の痛み、食欲低下、体重減少、糖尿病の悪化、黄疸などが現れた時には、すでに進行していることも少なくありません。

だからこそ大切なのは、「症状が出てから受診する」のではなく、「リスクがある人はできるだけ早期に、定期的に健診を行う」ことです。

糖尿病が急に悪化した方、原因不明の体重減少がある方、膵がんの家族歴がある方、慢性膵炎や膵のう胞を指摘されている方などは、一度調べる価値があります。

近年は、腹部超音波だけでなく、CT、MRI、MRCP、超音波内視鏡(EUS)などの診断技術が進歩し、小さな膵がんを発見できる可能性も以前より高くなっています。「何もないことを確認する検査」も、時には非常に大切です。

当院では、消化器内科専門医として膵臓疾患の診療にも力を入れています。「最近、糖尿病が急に悪くなった」「背中の痛みが続く」「家族に膵がんの人がいる」「健康診断で膵臓を詳しく調べたことがない」。そんな方は、「まだ症状が軽いから」と様子を見るのではなく、一度ご相談ください。

膵臓の病気は、早く見つけることが何よりの治療です。