院長コラム
「先生、においがわかりません」vol.1
コロナ感染の症状として有名になった「匂いがわからない」「匂いが感じにくい」
この3年の間、コロナ感染の患者さんから「コーヒーの匂いがわかりません」「カレーの匂いと味がわかりません」って訴えを聞いてきました。
嗅覚低下を引き起こす、ひとつに「加齢」があります。機序ははっきりとわかっていませんが、加齢によりにおいを感じる嗅細胞の能力が低下することが考えられています。
米国の大規模調査では、男性は60歳から、女性は70歳から嗅覚低下が目立ってくると報告されています。65歳以上に限ると男性の20%、女性の9%程度に嗅覚低下が認められると報告されています。喫煙も嗅覚低下のリスク因子であり、喫煙者の男性は注意が必要です。
また海外では認知症やその前段階である軽度認知障害(MCI)と嗅覚低下の関連が報告されています。米国からは、嗅覚低下がある人を前向きに追跡すると、ない人に比べて5年後にMCI発症リスクが1.5倍と報告されています(Arch Gen Psychiatry 2007)日本人の調査でも65歳以上の高齢者の約60%に何らかの嗅覚低下が認められた一方で、フレイル、サルコペニアの約90%に嗅覚低下を認めていました(Geriatr Gerontol Int 2019)
食事とは味覚だけでなく、触覚、聴覚、視覚、嗅覚(五感)全てを使って味わうものとされています。
フレイル、サルコペニア予防に腸活と以前のコラムで記載しましたが、私がおすすめしてきた「腸活」
をするためには食事がおいしく食べれることが前提です。
食事を五感で感じる割合は、視覚83~87%、聴覚7~11%、触覚1.5~3%、嗅覚2~3.5%、味覚1%といわれています。この事実からもわかるように、私達が思っている以上に食事を楽しむためには味覚より嗅覚の影響が大きいです。
驚きの事実ですね。