院長コラム

免疫力って一生もの?

免疫etcについて解説します。

・免疫力は一生続くタイプ(はしか、おたふく風邪、風疹)

私達同様、免疫の記憶力も完璧じゃありません。もちろん相手を忘れることもよくあります。
ただはしか、おたふく風邪、風疹は一度見たら忘れられないようなインパクトの強い相手なため、1回感染(ワクチン)を打つと一生ものです。最近は風疹を打ち忘れた世代の方にキャッチアップといって、追加接種の機会が設けられています。
ウイルスとしては何十年も型を変えない、ちょっとお馬鹿さんかもしれません。ワクチン接種を徹底すればヒトtoヒト感染が途絶えるため、世界からなくなるはずです。ワクチンが徹底されていない日本人、はしかやおたふくが海外の先進国で流行すると、持ち込んだのは日本人ではないかと真っ先に疑われます。

・免疫力が持続しないタイプ(インフルエンザ、新型コロナ)
免疫担当細胞の記憶に残りにくい相手です。時間が立つとだんだんと抗体が減ってしまいやがて無防備になります。免疫が持続しない理由としてウイルスの遺伝子変異があります。インフルエンザ、新型コロナなどはワンシーズンの感染流行期に抗原の一部を巧みに変化させて免疫担当細胞に見つからないように姿や形を変えます(有名人のかつらやメガネと同じです)過去に罹患したり、ワクチンを打っていても記憶して作られている抗体がまったく役に立たなくなります。ワクチン接種は有効ですが、その効果は半年程度のため定期的に接種する必要がでてきます。(もちろん人間もおバカではないので、交差反応といって多少なりとも似ている外敵に対して多少は気を効かせて免疫を発動させています)

・免疫力があやふやなタイプ(ヒトパピローマウイルス、肝炎ウイルス)
免疫担当細胞が見て見ぬふりをする相手です。感染してもひどい症状がでない(症状の出ない不顕性感染)ということは、抗体が作られにくいことを意味します。このため、何度も感染を繰り返すことになります。一部排除できずに残ると、持続感染(キャリア状態)となりウイルスが細胞の遺伝子を変化させて、がんができることがあるため感染予防対策が必要になります。子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス、肝臓がんの原因であるB型肝炎ウイルスなどは持続感染を引き起こす前にワクチンを接種して、もらわないようにすることが大切です

・免疫力がほぼ機能しないタイプ(ヘルペスウイルス)
子どもの頃に気づかないうちに感染し、普段は免疫細胞に見つからないようにじっと身を潜めていています(潜伏感染)
ヒトと共生(寄生)状態でウイルス側から見れば最も成功した事例です。
ヒト側からは体から追い出せずに居座れるのでもっともタチが悪い相手です。
宿主の体が弱ったところを見計らってウイルスが活発化して症状がでます。
抗ウイルス薬での対応が必要です。

世界の平均寿命は1990~2021年の間に6.2年延長しましたが、2019~21年の間(新型コロナウイルスが死因の第2位)で世界の平均寿命は1.6年短縮したと報告されています。
新型コロナウイルスの大流行により、死因の順位が大きく入れ替わったことは強烈なインパクトして科学雑誌Lancetに報告されています。
人類の歴史はこれまで感染症を克服しつづけて、生態系で最も長生きな生き物として進化しました。

こうしてみてみると、一生ものの免疫力の方が少ないです。
ぜひワクチン接種の機会を利用して、感染症に強い身体を手にいれましょう。