院長コラム
うたた寝中に落ちていく感覚「ミオクローヌス」
寝ているときにビクッとなったことはありませんか?
学生時代に授業中にうとうと、電車の中でうとうとしていて急に落ちるような感覚の後にビクッとなったことはありませんか?
この現象は医学用語でいうと「ミオクローヌス」と言います。
「ミオクローヌス」とは短時間の筋肉の収縮運動のことです。
うとうとしている寝入り際に自分の意思とは無関係に手足の筋肉が動くことから、ビクッとした感覚を覚えるのです。
なぜこのような現象が起こるのでしょう?
メカニズムが完全に解明されているわけではありませんが、「(入眠時)ミオクローヌス」は、筋肉の緊張維持や覚醒の維持にも関わる脳幹網様体の誤作動と考えられています。
本来、睡眠時の筋肉は緩んだ状態となっています。ウトウトしている状態、すなわち半分眠っているような時は覚醒から睡眠への移行時の切り替えがやや不安定な状態と言えます。その際に脳幹網様体から筋肉を緊張させるための信号が手足の筋肉に送られ、手足の筋肉が動くことでビクッとなると考えられています。この筋肉の動きが脳に伝わると、ビクッとしたこの動きを落下するような感覚として脳が解釈してしまうため、びっくりしてハッと目覚めてしまいます。
動悸や呼吸の乱れから病気ではないかと心配される方もおられますが、入眠時ミオクローヌスは生理現象であり、てんかんや痙攣とは異なるので心配はいりません。
入眠時ミオクローヌスと異なり、病的なのが睡眠中に5〜90秒間隔で繰り返して手足がピクピク動いたり、素早く跳ねたりするような動きが生じる「周期性四肢運動障害」です。
「入眠時ミオクローヌス」と「周期性四肢運動障害」の違いは、症状が出るタイミングです。
「入眠時ミオクローヌス」は寝入り際に起こります。
「周期性四肢運動障害」は睡眠中に起こります。
中高年に起こりやすく、患者さんに症状が出ていても途中で目が覚めるわけではないので自分が睡眠障害だということに気がつきにくいです。頻繁に起こると、睡眠障害の原因となります。
周期性四肢運動障害の原因として、鉄欠乏性貧血が隠れていることもあるため、注意が必要です。また症状を悪化させるカフェイン、アルコール、ニコチンを避けることが重要です。必要な場合は的確に対応すれば大半は軽快しますのでご安心ください。