院長コラム

花粉症に注射? ステロイドの功罪

患者さんの中で、昔、花粉症やアレルギーの治療で注射をしてもらったことがあって、それが良く効いたのでお願いできないですか?ってお尋ねされることがあります。

現在も標準的治療でうまくいかない究極の状況では、自費診療になりますがステロイドの注射は存在します。ただし保険適応内にいろんな治療方法があるため、これらの手段でどうしてもうまく対処できない場合でのみとなります。

過去はおそらく半減期が長い(効果の強い)ステロイドが万全と使用されていたと考えます。
ステロイドの副作用は以下の通りです。
大半は中止すると元に戻りますが、総投与量が多ければ多いほど、投与期間がながければ長いほど、副作用が出やすくなります。

  1. 易感染性(感染症にかかりやすい)
    免疫力が低下するため、風邪、インフルエンザ、コロナ、気管支炎、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。
  2. 糖尿病
    持病で糖尿病がある方は悪化する可能性があり、健常者でも血糖値が高くなることがあります。
  3. 骨粗しょう症
    骨がもろくなり、最悪の場合、圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などが起こる場合があります。
  4. 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
    潰瘍ができやすくなり、また潰瘍が治りにくくなります。
  5. 精神症状
    精神症状として、夜も眠れなくなったり、うつ状態となることもあります。
  6. 満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満
    食欲増進、中心性肥満、満月のような顔つき(満月様顔貌)
  7. その他
    血栓症、動脈硬化、脂質異常、副腎不全、高血圧、白内障、緑内障などが見られることがあります。

我々の専門でもある潰瘍性大腸炎やクローン病(難病)でもステロイドを使用します。
ステロイドは諸刃の刃(もろばのやいば)です。特に長期かつ繰り返し使用が想定される場合は細心の注意が必要です。必要量をできるだけ短期に、効果を見極めて効果がない場合は速やかに減量、中止することが重要です。
どうしてもステロイドでないと治せないという究極の状況以外は、将来発生するかもしれない副作用を考えて、薬の安全性を優先されるため、患者さんに説明して最終的に使用するかを決めています。

アレルギーは特にステロイドが効く病気ですが、花粉症は別の対処方法が複数あります。

将来にわたって、薬の副作用を抱え込まないようにかかりつけの先生にぜひご相談ください。