院長コラム
口腔内常在菌と大腸がん(お口ケアでガンと戦えるからだを手に入れましょう)
近年、口腔内常在菌であるフソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんの発がんや進行と関連があるとする報告されて世界中が驚きました(Gut. 2019 )
大腸癌の組織内に存在する菌が、口腔内の菌株と同一である可能性があること、フソバクテリウム・ヌクレアタムが存在する大腸癌では 低分化腺癌に多く、予後不良であることが報告されています。
大腸癌の予後(死亡)を規定するのは、遠隔転移であり、最も頻度が高い臓器が肝臓になります。
肝臓は門脈と肝動脈からの血流を介して細菌が入ってきやすい場所です。そのためT細胞、マクロファージなど多くの免疫細胞が存在してこれらの外敵の侵入に対応しています。大腸癌の肝転移巣組織中にT細胞が多数浸潤している症例では抗癌剤の感受性が高く、予後良好であると言われています。
非癌組織と比較して肝臓内の転移組織にフソバクテリウム・ヌクレアタムがより多く認められ、フソバクテリウム・ヌクレアタムが存在する転移症例では、肝転移巣切除後の全生存率が不良と報告されています。これはフソバクテリウムが、肝臓内、特にがん組織に存在する場合、抗腫瘍免疫になんらかの悪影響(転移を排除できないように)して、大腸癌の肝転移形成にも関与していると考えられています。
口腔内常在菌、がんの組織まで侵入(共存)して生きながらえようとする力を持ち、そのことががんからの生存を妨げていると考えると、恐ろしくなってきました。
以下に日々の口腔ケアが重要かということを再認識しました。