院長コラム

IBD(炎症性腸疾患:Inflammatory Bowel Disease)とは

口から食べた食事をエネルギー源とするために、消化、吸収、排泄が重要であり、腸(小腸+大腸)は非常に重要です。そんな重要な臓器である小腸、大腸に炎症がおきる病気は炎症性腸疾患(IBD)と定義されています。一方で、おなかのかぜと言われるウイルス性胃腸炎、抗生物質や解熱鎮痛剤などでおきる薬剤性腸炎などは原因がはっきりしており一過性で改善するものは通常IBDには含まれません。

IBDは
① 原因がはっきりしない
② 症状の改善と悪化を繰り返す
③ 長期にわたって治療を継続する必要がある
疾患で、主に「潰瘍性大腸炎」「クローン病」(指定難病)を指します。その他「腸管ベーチェット病」「単純性潰瘍」「好酸球性消化管疾患(好酸球性胃腸炎など)」などがIBDに分類されます。

IBDの中でも最も患者さんの多い潰瘍性大腸炎の患者数は年々増加し、1980年には約4,400人でしたが、現在は約24万人程度とされており、指定難病の中でも最も患者数が多くなっています。

発症年齢のピークが10後半~30代で、就職、結婚や出産などさまざまなライフイベントを控えた若年者に多く発症することから、日常生活や仕事に支障を来すことも少なくありません。原因はわかっておらず、根治療法も確立されていませんが、近年は症状の寛解(症状が落ち着いて生活に支障がなくなった状態)が期待できる治療法の進歩がめざましく、早期診断されて適切な治療を実施すれば、長期的な予後を大きく改善させる(入院率、手術率の低下)ことが可能となってきました。

最初の症状は、下痢、腹痛といったよくある症状です。

潰瘍性大腸炎では、病名の通り大腸に炎症が起きるのに対し、クローン病では口から肛門まで全消化管に炎症が起こります。病気の状態が悪ければ、発熱、体重減少、全身倦怠感、貧血などの症状を来すため、しばしば悪性腫瘍(がん)との区別が必要になる場合もあります。診断されても治療が十分でないと知らないうちに瘻孔(穴が開き臓器同士がつながる)、狭窄(狭くなる)といった腸管合併症を起こすことも知られています。特に瘻孔や狭窄により食事や便が通過できなくなるため手術が必要となったり、炎症が長く持続することで「がん」が発生するリスクが上昇するため、診断された後も定期的な大腸カメラが重要です。

当院には多くの炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)患者様、すなわち潰瘍性大腸炎 クローン病の方が通院されています。患者さん社会的背景(学業、仕事、家族構成、生活スタイル、病気の状態、通院できる頻度)などを考慮して患者さんと話しながら治療法の選択をすすめております。すでにIBDと診断された方で、転居や転勤により新しいかかりつけを探されている方のご相談にのっておりますので、気軽にご相談ください。