院長コラム
「便秘と下痢を繰り返」「トイレが不安で外出できません」過敏性腸症候群かもしれません
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、検査では異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常(下痢・便秘)などの症状が長期間続く機能的疾患です。
- 症状は数週間〜数年単位
- 緊張やストレスで悪化しやすい
- 若年層〜中年層に多い
主な症状と分類
主なタイプ | 特徴 |
---|---|
下痢型(IBS-D) | 食後すぐに強い便意、何度もトイレに行く。 |
便秘型(IBS-C) | 腹部の張りや不快感が強い、便が出にくい。 |
混合型(IBS-M) | 下痢と便秘を交互に繰り返す。 |
分類不能型(IBS-U) | 下痢も便秘もないが、慢性的腹痛や不快感あり |
IBSの腹痛は排便によって軽減することが多いのが、特徴です。
原因は「腸」だけじゃない?(腸脳相関)
発症には、以下のような複数の要因が関与していると考えられています:
- 自律神経の乱れ
- ストレス
- 不安、うつ傾向
- 食生活(脂質・カフェイン・アルコール等)
- 腸と脳の過敏な相互作用(腸脳相関)
診断
IBSは他疾患(大腸がん・炎症性腸疾患など)を除外した後の診断です。検査せずにIBSという診断はできません。
- 問診(症状の経過、排便パターン)
- 血液検査
- 超音波検査
- レントゲン
- 大腸内視鏡検査
◆ 治療法と対処法
1. 生活習慣・食事の改善
- 食物繊維の摂り方を調整(便秘型では増やす、下痢型では控える)
- 低FODMAP食(別コラムに記載しています!)が有効な場合も
- カフェイン・アルコールの過剰摂取を控える
- 脂肪分の過剰摂取を控える
2. 薬物療法
- 整腸剤
- 消化管運動調整薬
- セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(ラモセトロン塩酸塩)
- 抗不安薬・抗うつ薬(脳腸相関へのアプローチ)
3. 心理的アプローチ
- 認知行動療法
- マインドフルネス
- 瞑想
- カウンセリングなど
うまく向き合えば、生活に支障をきたさずに仕事や学校に通えます
過敏性腸症候群はかつては、気のせい、仮病といわれているものでした。緊張するとお腹がぐるぐるなる、試験前や試合前にお腹が痛くなることはありませんか?
ストレスの多い現代社会では、誰でも発症する可能性があり、正しく向き合えば改善できます。
症状がつらく、生活に支障をきたす場合は、早めに消化器専門医(当院)に相談してください。