院長コラム
遺伝?若くても膵炎になる人がいる理由
膵炎といえば、お酒をたくさん飲む中高年のおじさんの病気をイメージされるかもしれません。ところが最近では、20〜30代という若い世代でも膵炎を発症するケースがしばしば見受けられます。なぜまだ若いのに膵臓? その背景に、「遺伝」という見えにくいリスクが潜んでいることがわかってきました。
膵炎とはどんな病気?
膵臓は、食べ物を消化する酵素や血糖値を調節するホルモン(インスリンなど)を作る重要な働きをしている臓器でしたね。膵臓に炎症が起きると、急激な腹痛、発熱、消化不良、食欲低下といった症状が出ます。
急性膵炎は突発的に起こり症状がわかりやすいことが多いですが、慢性膵炎は徐々に膵臓の機能が低下するため症状がでないひとがほとんどです。病気で膵臓の機能が廃絶(全く働かなくなって)して初めて、消化不良、糖尿病に伴う症状がでてきます。
飲酒だけが原因じゃない?
慢性膵炎の多くは、長年の飲酒歴と関係しています。しかし最近の研究では、「あまりお酒を飲まない人」でも膵炎を繰り返す人が一定数いることがわかってきました。その理由の一つが遺伝的素因です。
遺伝子異常がリスクに
膵炎と関連が深い遺伝子には、PRSS1、SPINK1、CFTR、CTRCなどがあります。たとえばPRSS1遺伝子に異常があると、膵臓で作られる消化酵素が過剰に活性化されやすくなり、自己である膵臓を消化してしまうリスクが高まります。遺伝子変異は、家族性膵炎や若年発症の慢性膵炎と関係していることがわかっており、早い方は10代から膵炎を繰り返すケースも報告されています。
若くても安心できない膵炎体質
遺伝的素因がある人は、少量の飲酒や脂っこい食事、薬の副作用、あるいはストレスでも膵臓に炎症をおこしやすくなります。自覚症状がないまま膵臓に炎症を繰り返し、知らないうちに慢性膵炎へ進行してしまうこともあります。
家族に膵炎や膵がんの人がいる方、過去に膵炎と診断されたことがある方は、自分の体質や生活習慣に目を向けることが大切です。
予防法
体質を変えることはできませんが、生活習慣を見直すことで膵炎のリスクを下げることは可能です。アルコール、たばこ、過度な脂質摂取を避ける、適度な運動とバランスの良い食事を心がける。そして、腹痛や背部痛などの症状があれば、早めに医療機関を受診することが重要です。
膵臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、異常があっても気づきにくい臓器のひとつです。だからこそ、見えにくいリスクである遺伝の可能性にも目を向け、自分の体と向き合うことが、未来の健康を守る第一歩になります。