院長コラム
なぜ、メタボが発がんリスクを高めるのか?
生活習慣病予備軍ががんの温床になるこれだけの理由
「メタボリックシンドローム(メタボ)」という言葉が定着して久しく、今では健康診断では当たり前に用いられている用語です。メタボ=内臓脂肪の蓄積が、糖尿病、心筋梗塞の発症だけでなく、がんのリスクを高めることはあまり知られていません。
内臓脂肪は沈黙の炎症を引き起こす
メタボの本体となる内臓脂肪は単なるエネルギーとして蓄えられているだけでなく、脂肪組織は悪玉サイトカイン(炎症性サイトカイン:IL-6、TNF-αなど)を放出します。ここから始める慢性炎症は、以下のプロセスを通じて、発がんの第一歩である“遺伝子の不安定化”を助長します。
- 細胞のDNA損傷を誘発
- 細胞分裂を促進するシグナルを過剰に出す
- がん抑制遺伝子の働きを抑える
インスリンが多すぎると、がんが育ちやすくなる?
メタボ(エネルギー蓄積過剰状態)伴って「インスリン抵抗性」が増加します。これに対して人間は血糖を下げようとしてインスリンを過剰に分泌するようになります。
実は、インスリンやその類似因子(IGF-1)は、がん細胞の増殖や転移を促す“成長因子”として働くことがわかっています。大腸・膵臓・肝臓・乳がんなどで高インスリン状態(高IGF-1血症)がリスクとして明確に関連づけられています。
腸内環境の乱れ(ディスバイオーシス)ががんの土壌に
近年、腸内細菌叢のバランスが崩れると、以下のような悪循環が起こることが示されています
- 内臓脂肪の蓄積を促進(短鎖脂肪酸の減少)
- 炎症を惹起(LPSなど腸内毒素のリーク)
- 免疫バランスが崩れ、異常細胞を見逃す
- 腸粘膜の修復が遅れ、発がん物質と接触しやすくなる
つまり、メタボ=腸内環境の悪化=がんを育てる土壌の形成とも言えます。
免疫力の低下
肥満・糖尿病・脂肪肝といったメタボがあると、自然免疫であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きが低下します。NK細胞は本来、がん細胞を見つけ次第破壊する「監視役」ですが、高インスリン血症、腸内毒素の影響などにより、本来の監視能力が鈍ってしまいます。
がんは生活習慣病
日本人のがんのうち、実に半数近くが生活習慣と関連しているとされます。これは単に高齢化だけの因子では説明できません。メタボ健診は元来生活習慣病の予防と重症化の防止を目的として始まった精度ですが、メタボ健診で要精密、要精査項目が多い方はそれだけがんリスクの高い方と読み替えることもできます。健診で肝機能等が引っかかっている方はそれだけ、自分はがんリスクが高いと認識してもらって間違いないと思います。がんは高血圧、高脂血症、糖尿病と同じ生活習慣病です。