院長コラム
昭和のキャッチコピー「24時間働けますか?」 ― 寝ない美徳と睡気のはざまで生きてきて世代が感じること
昭和の時代を象徴するキャッチコピーに「24時間戦えますか?」がありました。
受験の世界でも「睡眠時間3時間で〇〇大学現役合格」といった武勇伝が語られ、働くにも勉強するにも「いかに睡眠を削って頑張るか」が美徳とされてきました。
時代は変わって令和の現代では正反対の価値観が広がっています。
企業は「睡眠負債が生産性を落とす」として社員に休養を推奨し、お昼寝ルームをオフィス内つくる企業も珍しくありません。受験生にも「しっかり寝て記憶を定着させよう」「8時間睡眠が理想」といったメッセージが主で、かつてのように「寝ないで完徹」などはむしろ危険行為とみなされています。
では、本当はどちらが正しいのでしょうか。
医学的には現代の考え方に軍配が上がります。
睡眠は記憶の整理や体の修復に不可欠であり、長期的な睡眠負債は生活習慣病、うつ病、認知症リスクを高めることがわかっています。昭和世代の働き方は若さ、体力、そして時代の社会構造に支えられていたからで、決して当時の人は今より健康的だったわけではありません。
ただし現代にも課題がたくさんあります。
スマホなどのデジタルデバイスの普及、24時間営業など夜型生活を支える社会構造の変化により、昔よりかえって眠れない若者が増えています。「しっかり寝なければ」というプレッシャーが不眠を悪化させるケースもあります。
結局のところ重要なのは睡眠は量より質です。6時間でもぐっすり眠れて日中に眠気がなければ十分な場合もありますし、8時間寝ても浅い眠りなら睡眠不足です。大切なのは、社会が求める姿勢に振り回されるのではなく、自分の体調や生活に合った眠り方を探すことです。
昭和の「寝ない美徳」も、令和の「眠り推奨」も極端に傾けばリスクを伴います。
自分にとって最適な眠り方を見つけることが、これからの時代の知恵といえるでしょう。