院長コラム

抗生物質が招く様々な心身の不調3

エビデンスから見る抗菌薬曝露とIBSリスク

抗菌薬と腸内細菌の関係は、ここ十数年で急速に研究が進んでいます。
中でも注目されているのが、「抗菌薬の使用歴が、将来の過敏性腸症候群(IBS)の発症リスクを高めるかどうか」という報告です。

ある大規模な疫学研究では、小児期や青年期に抗菌薬を繰り返し使った人は、成人後にIBSを発症する確率が高いことが示されました。
特に広域スペクトルの抗菌薬(セフェム系、マクロライド系など)を複数回投与されたケースでリスクが上がる傾向がありました。

また、成人においても抗菌薬曝露後に「抗菌薬関連下痢」を経験した人は、その後も腸内細菌の多様性が完全には回復せず、IBS様の症状(下痢や腹部不快感)が長期に残ることが観察されています。

2019年に発表されたシステマティックレビュー(多くの論文を集めて解析した報告)では、抗菌薬使用歴とIBS発症の関連について複数の研究を統合解析した結果、抗菌薬曝露はIBSリスクを約1.5〜2倍に上昇することが報告されました。

これらの報告から理解できるのは、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)がIBS発症の背景にあり、抗菌薬の使用がその大きなトリガー(きっかけ)の一つになっている可能性が示唆されています。

抗生物質の繰り返しの使用はIBSのリスクを高める可能性があります。