院長コラム

抗生物質が招く様々な心身の不調4

抗菌薬と腸管免疫の関係

腸は体の最大の免疫臓器です。
腸には全身の免疫細胞の約7割が集まり、食べ物や細菌に日々対応しています。
その免疫の調和を調整しているのがずばり、腸内細菌です。

腸内細菌は、腸の上皮細胞や免疫細胞に適度な刺激を与えることで、過剰な炎症を抑えたり、病原菌への防御力を高めたりしています。
善玉菌が作る短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸など)は、腸管粘膜バリアを強化して、免疫の暴走を防ぐ働きがあります。

ところが抗菌薬を繰り返し使うと、このバランスが崩れます。
善玉菌が減少して、腸管粘膜バリアは弱くなり、免疫が過敏な状態になります。
本来なら無害な食べ物や腸内常在菌に対しても反応しないのに、ちょっとした変化で過剰反応を起こしやすくなります。これが慢性炎症やIBS症状につながると考えられています。

腸内細菌のバランスが崩れたディスバイオシス状態では炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)が増加して、腸管の神経を刺激して痛みを増幅させます。つまり抗菌薬の乱用は腸内細菌のバランスを崩すだけでなく、腸管免疫機構を非常に不安定にするというもっと良くない状態を作り出します。

抗生物質は両刃の剣です。必要時はからだを外敵から守るために必要な手段です。ただそれと引き換えに腸管免疫にとっては大きな負担が生じています。免疫の過敏応答から始まり、炎症の慢性化ならびに無秩序な炎症の暴走を防ぐためにも、腸内細菌との共存を常に意識した抗生物質の使い方が医師のみならず、患者さんにも求められる時代になっています。