院長コラム
抗生物質が招く様々な心身の不調6
抗菌薬、絶対非常な状況と避けたい状況
抗菌薬は腸内細菌叢を乱し、IBS(過敏性腸症候群)のリスクを高める側面があることはこれまで示してきた通りです。では必要な場面について整理したいと思います
1. 必要な抗菌薬とは?
・重症感染症や敗血症の治療
→ 命に関わる状況では迷わず使用。
・細菌感染が明確な場合
培養等の検査で原因菌が確認できている時は、その菌を含む狭いターゲットでやつける治療を優先です。
・臓器特異性を考慮されている場合
感染部位(抗菌剤が届きにくい脳、関節、留まりにくい前立腺など)を考慮して、できるだけ臓器特異性が高い抗菌剤選択をする。
2. 避けたい抗菌薬の使い方
・広域スペクトル抗菌薬の漫然投与
セフェム系、マクロライド系、ニューキノロン系は、腸内細菌叢に大きな影響を与えやすい薬です。必要性が明確でないのに繰り返し投与するのはとてもリスクが高いと言えます。
・長期間の連用
慢性副鼻腔炎や皮膚感染症では、長い場合数週間~数か月使用されます。この状況だと腸のディスバイオシスが固定化しやすくなります。
・とりあえず抗生物質の処方
風邪(インフルエンザ等のウイルス感染)にはそもそも抗菌薬の効果はありません。熱があるからといって安易に処方は避けるべきです。
3. バランスの取り方
抗菌薬投与のリスクとベネフィットの天秤は、感染の重症度、原因菌(多剤耐性菌など)、患者の背景疾患などを総合的に判断して「本当に必要か」を見極めることが、医療者にも患者にも求められています。
抗生物質の乱用は世界的な問題であり、必要なときに、必要なだけ、適切に使うことがWHOからも宣言されています。抗菌薬は悪い薬ではありません。命を救う武器であると同時に、乱用すれば腸内環境に悪影響を及ぼす可能性がある両刃の剣でることを良く理解することが重要です。