院長コラム
抗生物質が招く様々な心身の不調7
人間という生態系を守ってきた抗生物質と腸の医学の未来
抗菌薬は、これまで人類の命を救ってきた最も重要な薬のひとつです。
しかしその裏側で、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)が、IBS(過敏性腸症候群)や炎症性腸疾患、代謝異常にまで関与することが次々と明らかになってきました。
では、これからの医学はどのように抗菌薬と向き合っていくのでしょうか。
1. 抗菌薬適正使用(Antimicrobial Stewardship)の強化
世界中で「抗菌薬を必要なときに、必要なだけ使う」取り組みが広がっています。
感染症を確実に治療しつつ、腸内細菌や耐性菌のリスクを最小限にするため、医師・薬剤師・患者の協力が不可欠です。
2. マイクロバイオーム研究の進展
腸内細菌叢の解析技術が進み、個人ごとの「腸のプロファイル」に基づいて治療を調整する時代が近づいています。将来的には「この抗菌薬はあなたの腸に強い影響を与えるので避けましょう」といった個別化医療が可能になるかもしれません。
3. 腸内環境を守る患者自身の意識改革
「風邪だから抗菌薬をください」と求めるのはもう過去の習慣です。
患者さんご自身が、抗菌薬のメリットとリスクを理解して適切使用に協力することがこれからの時代には欠かせません。
まとめ
抗菌薬は人類の武器であると同時に、腸内環境を揺るがす大きな存在となっていることが明らかになりました。これからの医学は、「病原菌を叩いて人類という生態系を守るだけでなく、腸の生態系を守ること」に力を注いでいく時代へとシフトしています。