院長コラム
追加コラム 抗菌薬後IBSという概念について
感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)と抗菌薬後IBS
1. 感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)
これは正式に医学的に確立している概念です。
赤痢、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎など急性胃腸炎後、炎症が収まっても腹痛や下痢が慢性化し、IBS様症状が続くケースを指します。
疫学的にも急性腸炎にかかった人の約5〜15%がその後IBSに移行することが知られています。
2. 抗菌薬後IBSという概念はあるか?
正式に「抗菌薬後過敏性腸症候群(post-antibiotic IBS)」という診断単位はありません。
ただし、臨床的には 抗菌薬投与後に腸内細菌叢が乱れてIBS様症状が持続するケース は報告されており、実臨床でもよく経験します。医学論文でも抗菌薬曝露がIBSリスクを高めるというエビデンスが示されています。
- 小児期の抗菌薬使用歴が成人後のIBS発症リスクを上げる(コホート研究)
- 成人において、抗菌薬関連下痢の既往者はIBS様症状を残しやすい
- 抗菌薬曝露はIBSの発症オッズを1.5〜2倍程度に上げる(メタ解析)
3. 概念の位置づけ
つまり「抗菌薬後IBS」という独立した疾患名は存在しませんが、以下のように理解されています。
・感染後IBSの近縁概念
・抗菌薬曝露後に起こる ディスバイオシス関連IBS
として理解されています。
実臨床の現場でも感染がなくても抗菌薬投与後のIBS症状と考えられる患者さんは少なくありません。