院長コラム

最近咳をしている人、周りにたくさんいませんか?

季節の変わり目、汗ばむような陽気になったり、寒さが急にもどったり、雨がふったり、体調変化が出やすい時期ですね。
まもなく梅雨の季節、花粉症やアレルギー性鼻炎に悩まされている人にとっては春花粉が終焉を迎えて過ごしやすい時期になってまいりました。

最近外来をしていると咳と痰あるいは咳が止まらないと受診される方が増えています。
一般に言われているかぜ(かぜ症候群)は、テレビコマーシャルでご存知の通り「鼻かぜ」「喉かぜ」「咳かぜ」の3パターンに分けることができます。
「鼻かぜ:鼻汁、鼻詰まりを主とする急性鼻副鼻腔炎」
「喉かぜ:のどの痛みを主とする急性咽頭炎」
「咳かぜ:咳、痰を主とする急性気管支炎」

外来を受診した患者さんからよく欲しいといわれる「抗生物質」
外来かぜ患者さんの大半はウイルス性で「抗生物質」は必要ありません。
本当に「抗生物質」が必要なかぜ症候群は「鼻かぜ」「喉かぜ」の溶連菌感染、「咳かぜ」百日咳のみです。
「咳かぜ」をこじらせた(2週間以上とまらない)患者さんの中に、「百日咳」「非定型病原体による気管支炎」「(その時点ではレントゲンに写らない)肺炎」の患者さんがおられます。
当院でも2週間以上咳が続いて薬を飲んでいるのに一向に咳が止まらないという方には、レントゲンをおすすめしています。
その時点で肺炎になっている方は稀ですが、基礎疾患をお持ちの中高年の方は知らないうちに肺炎になっている方がおられます。
あるデーターでは、咳で受診した患者さんの3人に1人がなんらかの肺炎を合併していると言われています。ただ肺炎になった入院患者の60%は細菌やウイルスが同定できなかったというデーターもあります。また同定された患者の中でもウイルス性27%、細菌性は11%だったという報告もあります。
肺炎治療では「抗生物質」は必ず必要とされていますが、その一部に「抗生物質」がいらないウイルス性肺炎も含まれているのは驚きです。無用な「抗生物質」をたびたび飲んでいると、本当に必要な時にその薬が効かなくなります(耐性といいます)。大半のかぜに「抗生物質」は不要です。
時間がたってたまたま治ったかぜを振り返ると、「抗生物質」が効いたと思っておられる方も多いです。外来かぜに「抗生物質」が必要なものは極めて限られています。

「抗生物質」まで処方されて、咳がとまらない方はぜひ一度胸部レントゲンを撮ってもらいましょう。