院長コラム

箸休めコラム『はたらく細胞』は最高の免疫学教科書

私は医学部の学生時、免疫学や生化学といった基礎医学がとても苦手でした。
免疫は目に見えない、でも試験にはでるから覚えないといけない。
分厚い免疫学の本を前に苦しんでいた過去を考えると、その時に漫画『はたらく細胞』があったらもっと以前から免疫学に興味が持てたかもしれないと思っています。この作品を読めば、人体の中でおこっている細胞たちの日々奮闘が鮮やかに描かれていて免疫学の面白さにふれることができます。

たとえば、真っ白な制服で働く 白血球(好中球)。敵を見つけるとすぐに駆けつけ、バイ菌を徹底的に排除する姿は、まさに第一線で体を守る兵士だ。赤い帽子をかぶった 赤血球 が酸素をせっせと運び、倒れそうになりながらも全身に届けるエピソードは、酸素供給の大切さを感覚で理解させてくれる。

そして圧倒的存在感を放つ キラーT細胞やマクロファージ。専門書に「抗原提示」や「細胞性免疫」と書かれても頭に入りにくいが、擬人化された彼らのやり取りを通して「誰が誰に指示を出すのか」「どの細胞がどの敵を叩くのか」が自然に理解できます。

さらに「はたらく細胞BLACK」では、喫煙。ストレス、高血圧といった現代病の裏側で、細胞たちがどれほど苦しみながら働いているかが描かれる。これはまさに 生活習慣病の免疫学的な可視化 であり、難しい病態生理を感情を通して学べる点が素晴らしい。

『はたらく細胞』のすごさは、エンターテインメントでありながら、免疫学の基礎を視覚的・感情的に刷り込む教材になっていることです。

免疫学は膨大な役割を果たす細胞、複雑な伝達シグナル、それに応答するレセプターがあり、一体何を敵とみなして炎症がおきているのか、それぞれの役割を頭に入れて整理するのは本当に難しいです。
そんな難しい学問を、『はたらく細胞』という漫画が、学び始めの人にとっては理解の入り口になり、専門家にとっても説明をしやすくする良好な教科書となっています。

楽しみながら理解することこそが難解な免疫学を自分のものにする最短ルートになります。