院長コラム

子どものうちに全部打ってしまう? ワクチンと意思決定の問題

ワクチンには大きく二つのタイミング(子どもの時に受ける定期接種と大人になってから任意接種)があります。
両者には決定的な違いがあります。子どものときは親が判断して受けさせますが、大人になってからは本人の意思で決めるという点です。

実はこの意思決定の違いが、接種率を大きく左右します。
子どもの頃に行われる定期接種ワクチンは接種率が高く、社会全体の感染症を劇的に減らしてきました。一方で大人になってからのワクチン(HPV、帯状疱疹、インフルエンザ、コロナワクチン)は、「面倒」「怖い」「お金がかかる」といった理由で後回しにされて、軒並み接種率が低迷してしまいます。

では子どもの時に全部打ってしまえばよいのでしょうか?
子どもは大人と異なり免疫機構ができあがっていないため、感染症のリスクを回避するためできる限り早い時期に接種することが必要です。しかしワクチンの中には年齢が上がってから打ったほうが効果的なもの、抗体獲得時期が限られるため、成人期に追加接種が必要なものもあります。
つまり子どものうちに全部打つのは現実的には難しく、子ども時代の接種+成人期の追加接種が最適とされています。

問題は、大人になったときに自分の意思で予防接種を受けるという行動選択をとれる人が少ないという現実です。これに対する解決策はとして、学校や職場での集団接種、費用補助の拡大など「意思に頼らない仕組みづくり」が必要です。

大人になったら、自分の未来を自分で守る必要があります。
そのために社会全体で、成人ワクチンも当たり前に打つ文化を育てることが必要と考えます。