院長コラム
耳鳴りの謎-耳鳴りは一時的な適応障害
耳鳴りは治らないと言われる代表的な症状のひとつです。
しかし、最新の脳科学により“なぜ鳴るのか” “なぜ慣れるのか” が少しずつ明らかになってきました。
耳鳴りを「耳の異常」ではなく、脳の問題です。
耳鳴りは「耳」ではなく「脳」が鳴らしている
耳鳴りの主な発生メカニズムは以下のように説明されています。
入力情報の減少
加齢や騒音によって内耳の有毛細胞が傷つくと、一部の周波数帯の音情報が脳に届かなくなります。
聴覚野の過敏性
音が足りなくなった脳は、空いた領域を勝手に活性化して埋めようとします。これが耳鳴りとして知覚されるようになります。
神経ネットワークの同期化
脳画像研究では、耳鳴り患者の脳でγ波(30〜80Hz)という高周波の神経同期が増加していることが分かっています。これは脳が静けさを埋めようとして代償的に興奮していることを示しています。
感情中枢(扁桃体)の関与
音そのものより、「その音をどう感じるか」を決めるのは扁桃体です。
耳鳴りを怖い、不安なものと感じるほど、扁桃体が反応して聴覚野の活動が強化されます。
逆に、気にしなくてもいいようなものと脳が認識できるようになると耳鳴りは気にならなくなります。
脳もやがて慣れる
この現象をハビチュエーション(Habituation)と呼ばれ、脳科学的には感覚入力への反応性が低下することを意味します。
慢性耳鳴り患者のfMRI画像では、前帯状皮質(集中と情動のコントロール)と前頭前野(思考と判断)が再構築(リモデリング)を認めることが確認されています。つまり、脳が「この音はもう気にしなくていい」と認識できるようになっています
サウンドセラピーは“音の処方箋”
自宅でできるサウンドセラピーには以下のようなものがあり、音の好みや体調に合わせて選択して耳鳴りを慣す作業が必要です
- ホワイトノイズ(雨音・波・風など)
- 自然音・環境音
- 個人に合う音(耳鳴りマスカーアプリなど)
耳鳴りは幻の音ではなく、脳の再編成現象
扁桃体と聴覚野の過活動が音の不快感を増幅しますが、多くの人は時間とともに慣れを獲得できます。
耳鳴りは、消えないけどやがて受け入れられるようになると理解できれば過度に恐れたり、ストレスに感じることもなくなると思います。