院長コラム

本当に特発性難聴?― 他疾患と見分けるために

突発性難聴は突然耳が聞こえなくなる病気として広く知られていますが、突然の難聴がすべて突発性難聴というわけではありません。


似たような症状を示す別の疾患が隠れていることもあり、診断は専門医による慎重な鑑別が必要です。突発性難聴の診断条件は、原因が特定できず、急に発症した感音難聴であることです。
特発性と呼ばれていても、後に別の原因が明らかになるケースがあります。
いちばんみなさんがご存知な疾患はメニエール病です。
初期の段階ではめまいを伴わず、突発性難聴とほとんど区別がつかないことがあります。
その後、数週間から数か月後に回転性めまい、耳鳴り、耳閉感を繰り返すようになり、メニエール病と診断される例があります。
もう一つは聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)です。
良性腫瘍ですが、聴神経を圧迫することで片耳の聞こえが徐々に低下します。
初期には突然発症で悪化することもあり、一見突発性難聴に似ています。
突発性難聴が疑われても症状が回復しないときや再発を繰り返すときには、MRIによる画像検査が不可欠です。その他、自己免疫性内耳炎、ウイルス性神経炎、薬剤性難聴、血管性障害なども突発性難聴と同様の経過をとることがあります。

自己免疫性内耳炎は、免疫が内耳を誤って攻撃してしまう病気で、左右交互に難聴が出ることが特徴です。ウイルス感染ではヘルペスやムンプスウイルスが関係して難聴に加えて、発熱や倦怠感を伴うこともあります。薬剤性の場合は抗がん剤、抗菌薬、利尿薬などが原因となることがあります。血管性では脳梗塞など、内耳の微小血栓による循環障害が背景にあります。

発症時の詳細な問診、聴力検査、鼓膜の観察、平衡機能検査、血液検査、そして必要に応じてMRIなどの画像診断を行い慎重な診断を行うことが重要です。特発性という名前は、あくまで「現時点で他の原因を説明できない場合」に使われる便宜的な名称です。特発性=原因が本当に存在しないという意味ではありません。初診時の検査で異常がなくても、数か月後に新しい所見が見つかることがあります。

どの領域の病気も同じですが最初から決めつけずに経過を見ながら、本当に正しいか疑いながら診断していく姿勢が必要です。