院長コラム

「クローン病」

 クローン病患者数は年々増加し、4万人以上といわれています。
男性は20〜24歳、女性は15〜19歳がピークがあり、10〜20代の若年者に多く発症します。
男女比は2:1と、男性に多くみられています。

病変が主に小腸に発生する「小腸型」、小腸と大腸の両方に発生する「小腸・大腸型」、主に大腸に発生する「大腸型」の3つの病型に分けられています。
最も多いのは回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも口から肛門までの全ての消化管に発症する可能性があり、非連続的に炎症が起こるのが特徴的です。

腹痛、下痢は、半数以上の患者さんに認められます。
病状が進行すると、全身症状(発熱、体重減少、全身倦怠感)を認める場合もあります。発熱、体重減少、全身倦怠感などの症状は、感染症、悪性腫瘍(がん)との鑑別が必要になります。

また炎症が腸管壁の深くまで及ぶと、腸にさまざまな合併症が起こることがあります。 
炎症を繰り返すことで腸管の内腔が狭くなる狭窄、腸管がもろくなり穴があいてしまう穿孔、腸管に穴があいて、腸と他臓器や皮膚の一部がつながってしまう瘻孔などがあります。 
肛門病変があると、肛門周囲の違和感や痛みを訴えられることもあります。 
炎症による腸炎により粘膜が障害されると、吸収不良や蛋白漏出が起こり、低栄養、体重減少をきたすこともあります。
腸以外の全身合併症として、口(口内炎)、眼(虹彩毛様体炎)、関節(関節炎)、皮膚(結節性紅斑)などが挙げられます。

クローン病は、症状が落ち着いている状態(寛解期)と症状が悪化している状態(活動期)を繰り返しながら慢性的な経過をたどっていきます。

症状が腹痛のみ場合は、学校や会社を休んだ際に、周囲から時に怠け者、仮病、心の病のレッテルを貼られることもあります。診断もつきにくい点もあり、他の病気と間違われて治療されている場合も見受けられます。

診断がされても、治療がうまくいっていないと腸管合併症、腸管外合併症により手術が必要となったり、炎症が長く持続することで「がん」が発生するリスクが上昇するため、診断された後も定期的な大腸カメラが重要です。

クローン病かもと言われたことがある方、治療の目的は病気の活動性をコントロールして寛解状態を維持し、患者さんのQOLを高めることです。 
 
クローン病と診断された場合、を目指す治療(寛解導入療法)が行われます。
その後、症状が落ち着いたらそれを維持するための治療(寛解維持療法)を行います。 
治療法として、薬物療法、栄養療法などの内科治療と手術を含めた外科治療があります。
(内科治療)
・5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ)
・チオプリン製剤(イムラン、ロイケリン)
・成分栄養療法
・ステロイド剤(ゼンタコートカプセル)
・生物学的製剤(レミケード、ヒュミラなど)

(外科治療)
・シートンドレナージ
・手術