院長コラム

注意が必要な「かくれ高血圧」

患者さんによくご説明するのは、高血圧は「長生き病」ということです。
20〜64歳では、29%が高血圧者であるのに対して、65~74歳で67%、75歳以上で78%が高血圧と言われており、誰もがなりうる病気の一つです。
高血圧は症状がないので、なんで治療するだろうと思われる方も多いと思います。
一番の治療の目的は、高血圧の持続による脳血管、心臓病、腎臓病にならないようにすること、それによるに死亡を減少させることです。

今回は、健診や診察室だけの血圧測定ではわからない高血圧(かくれ高血圧)のご紹介です。
健診でクリアしているからといって安心するのはおすすめできません。
特に早朝や夜間高血圧は、脳・心臓・腎臓など全ての脳心血管病リスクが高く、診察室高血圧よりも臓器障害が進行しているといわれています(高血圧治療ガイドライン2022)
健診で血圧が高くなくても、かくれ高血圧が疑われる、なりやすい方は以下の方です

  • 運動不足の方
  • 肥満、メタボリックシンドロームの方
  • 喫煙者
  • アルコールを多量摂取する方
  • 不眠
  • 夜勤がある方
  • 糖尿病
  • 心血管疾患を合併している人
  • 心電図で左室肥大ありと言われた方

かくれ高血圧
1)白衣高血圧
診察室の血圧が高血圧であっても、診察室外血圧が高血圧ではない状態です。
最近、白衣高血圧はただの高血圧ではなく、注意が必要な高血圧として注目されています。
前回のブログで紹介した家庭血圧を測定して医師との相談が必要です。

2)仮面高血圧

  • 早朝高血圧
    診察室血圧が正常(140/90mmHg以下)でも、家庭の早朝血圧が135/85mmHg以上の方は、早朝高血圧と定義されています。夜間から高血圧が持続している方、朝方のみ急激に上昇する高血圧(モーニングサージタイプ)があり、いずれも治療適応です

    早朝高血圧は脳、心臓、腎臓すべての心血管疾患のリスクと関連していて、白衣高血圧よりも臓器障害が進行し、将来の脳卒中のリスクや後期高齢者の要介護リスクが高くなります
  • 夜間高血圧
    夜間血圧が120/70mmHg以上の場合です。本来夜間の睡眠中には副交感神経が優位に働き、昼間に比べて10 ~ 20 %ほど血圧が下がるのが一般的です。通常は夜間になると下がる血圧が下がらないのが夜間高血圧です。注意が必要です

    早朝・就寝時に測定した家庭血圧が正常域にあっても、夜間血圧のみ高い患者さんでは血管障害が進行して心血管疾患のリスクも高くなります。
    夜間高血圧の原因として、心不全、慢性腎臓病、糖尿病、自律神経障害、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などが考えられます。
    SAS以外にも十分な睡眠がとれていないことで上昇している場合もあります。

夜間高血圧で特に怖い原因が、睡眠時無呼吸症候群(眠っている間に呼吸が止まってしまう状態を繰り返す疾患)です。国内における高血圧患者の約10%に合併していると言われています。
睡眠時無呼吸症候群には、気道の閉塞を伴うものと伴わないものがあり、特に高血圧と関係が深いのは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です。
睡眠中は本来副交感神経が優位になることで血圧が下がりますが、OSAS患者の場合は寝ている間に呼吸が止まり、無呼吸、呼吸再開のパターンを繰り返すため、交感神経が優位のままになります。その結果として夜間の血圧が高くなってしまうのです。

もし、夜間の血圧が高く、家族にいびきを指摘されたり、昼間の眠気が強い方は、睡眠時無呼吸症候群を疑われますので一度、クリニックで相談をしましょう。