院長コラム

「食後低血圧」聞いた事ありますか?

食事後に席を立とうとしたとき、倦怠感やふっと意識が遠のくことを経験されたことはありませんか?
もしそんな経験があられる方は「食後低血圧」の可能性があります。

これまでは高血圧のお話をしてきたので、混乱されている方もおられると思います。

低血圧は、一般に収縮期血圧100(mmHg)以下(拡張期血圧60(mmHg))以下を指します。
ほとんどは、起立性低血圧ですが、それ以外に一過性に血圧が維持できずに低血圧なる病態として、食後低血圧、排尿後低血圧、透析後低血圧などがあります。

食後低血圧は、食後2時間以内の収縮期血圧(上の血圧)の20mmHg以上低下と定義されています。
65歳以上の高齢者では、3人に1人程度が食後低血圧と推定されています。

食後低血圧が起こる仕組み

食事をすると、消化・吸収のために血液が腸の近くに集まります。
人体では特定の臓器に血液が必要で集まることで、血管内の血液量が一時的に減っても、自律神経(交感神経)の働きで血圧を維持できるように心拍を高めたり、血管を収縮させたりすることで血圧を一定に維持できるセーフティー機構が備わっています。
食事をすると、内臓血管の血流増加と血管抵抗の低下により、一時的に血圧低下が低下します。

ところが加齢や自律神経の乱れにより、食後の血圧を維持するセーフティー機能がうまく作用しないと、急激な血圧低下が起こりやすくなります。これが食後低血圧の起こる仕組みです。

パーキンソン病,アルツハイマー病,脳血管障害などの神経疾患だけでなく,高血圧,糖尿病,血液透析患者さん、自律神経の調整機能が低下した高齢者に認められます。
高血圧に食後低血圧を合併する場合は,服用量を減らすなどの対応が必要な場合もあるため、医師へぜひ相談してください。

食後低血圧かどうかを知る

自宅での食前・食後(食後の血圧がもっとも低下しやすいとされる食後1時間頃)の血圧測定を行いましょう。
食前後の収縮期血圧(最高血圧)20mmHg以上低下する場合には、食後低血圧の可能性が高いといえます。

日常生活での予防策

食後に血液が消化管に集まることで、脳への血流が維持できずに低血圧が起こると考えられているため、以下の方法を試してみましょう。

①食べすぎない
食べすぎ、とくに炭水化物をとりすぎると、食後低血圧を起こしやすくなると言われています。
②わけて食べる
分けて食べることで1回で食べる食事の量を減らすことができます。
③カフェインをとる
カフェインには血管を収縮させて、食後低血圧を予防する効果があるといわれています。コーヒーや緑茶などを食後に飲んでみましょう。


最近の研究では、食後低血圧は脳卒中や心筋梗塞のひきがねになる可能性も指摘されています。

食事後に倦怠感やふっと意識が遠のくことがある方は、一度、食事前後で血圧を測定してみましょう。