院長コラム
かくれ高血圧?(睡眠時無呼吸症候群かもしれません)
前回までのテーマ「高血圧」
今年の健康診断で急に「高血圧」って言われた方おられませんか?
なんでだろう?歳のせい?
十分な睡眠時間を取っているのに関わらず、昼間に眠気があったり、起床時に倦怠感や頭痛はありませんか?もしくは家族に「いびきがうるさい」「やたら夜中にトイレに起きるね」って言われたことありませんか?
もしかしたら、「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。
睡眠は、身心の疲れを取るためにとても大切な時間です。そんな大事な睡眠の質を著しく落とす、睡眠時無呼吸症候群について説明していきます。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中の呼吸が浅くなったり、一時的に止まる状態です。
重症であれば、高血圧、不整脈などの循環器、呼吸器疾患の原因となります。
疫学:成人男性約3~7%、女性約2~5%に認められると言われています。
男性は働き盛りの40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性は閉経後に増加します。
病態:無呼吸になる機序で以下の3つに分類されます。一般的には閉塞型が大部分を占めます。
「閉塞型」空気の通り道である上気道が狭くなることで起こるもの
「中枢型」呼吸を調整する脳機能(延髄)の機能低下によるもの
「混合型」閉塞型と中枢型が混ざったもの
原因:扁桃腺が大きい、舌が大きい、鼻炎や鼻中隔弯曲のため鼻の通りが悪い、顎が後退している、顎が小さいなどの骨格が原因となりえます。
肥満はSASと深く関係しているため、減量すると改善する場合があります。
症状:いびき、日中の眠気、起床時の頭痛、夜間の頻尿などを認めます。
日中の眠気を伴う居眠り運転事故、労働災害などきっかけに発見される場合があります。
検査
簡易検査(自宅で検査が可能です)
精密検査(夜間病院での検査が必要です)
睡眠ポリソムノグラフィー検査(PSG)で1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)を評価します
AIH5以上であり、かつ日中の眠気などの症状を伴う場合に、SASと診断します。
治療
軽症:減量、食生活、行動変容(飲酒を控える、寝る姿勢を変化させる)、マウスピース(下顎を前方に移動できるため)
中等症~重症の場合:経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP、マスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法)
医療保険適応は、簡易検査でAHIが40以上、あるいは精密検査でAHIが20以上です。
予後
成人SASは、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの発症リスクが約3~4倍高く、特にAHI30以上の重症例では心血管系疾患発症リスクが約5倍にもなります。これらのリスクが高い人でもCPAP治療により健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。
当院でも特に健診にいらした方が、前から気になるとのことで簡易検査を申し込まれて、SASの診断、治療により睡眠が取りやすくなった、快適になったとおっしゃることが多いです。
気になられる方、症状のある方は一度医師へ相談してみましょう。