院長コラム

愛しのお酒の話

急に熱くなって、ビールがおいしい季節になってきました。
コロナが明けて、〇〇フェス、〇〇祭というイベント広告をよく見かけるようになりました。
季節が安定する夏は音楽フェスが盛んにおこなわれています。
そういえば、1年中グルメフェス、お酒のフェスは開催されていますね。

花火大会、夏祭りからスポーツ観戦まで大人が参加するイベントにはお酒がセットです(飲めない方には全く関係ありませんが・・・)

江戸時代の川柳由来で「酒なくて何の己が桜かな」という有名な言葉があります。
酒がなければ、花見をしようと月見をしようと、まことにおもしろくないものだ、という意味です。飲めば楽しくなり、食欲が亢進して、日々の憂さを晴らせるそんな時間とフェスという楽しい時間がセットになっているのは昔から同じなんですね。

お酒を飲むと体の中で起こることについて説明したいと思います。

酔いの原因となるエチルアルコール(以下、アルコール)胃で20%、小腸で80%が吸収されます。
空き腹にビールが良くないのは、食事をせずにアルコールを流し込むと、急激にアルコールが血中に吸収されるからです。

肝臓で分解されるアルコール、1回で分解できないので、残ったアルコールは全身を何度もめぐります。脳も通りますので、これが酔いといわれる現象を作り出します。
脳は外側から、大脳辺縁→大脳新皮質→小脳→脳幹(延髄)という構造になります。
アルコールの血中濃度が上昇するほど、中心部まで麻痺していきます。
辺縁系のみマヒしている時はいわゆる「ほろよい(気分は爽快、皮膚が赤くなり、体温があがり、脈が少し早くなります)」、次に皮質までマヒすると「酩酊初期(大声をだしたり、気が大きくなる)」、更に小脳までマヒすると「酩酊(何度も同じことを話をしたり、千鳥足になります)」、最後に海馬や脳幹レベルまでマヒすると「泥酔~昏睡」意識レベルがはっきりしなくなり、ゆすっても起きない状態になります。これはとても危険な状態です。

いわゆるお酒が強いか、弱いかはアルコールを分解できる酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素:ALDH)の差です。

お酒がある程度飲めるのは日本人の約50%、全く飲めないいわゆる下戸は25人に1人(4%)程度とされています。日本人を含むモンゴロイドではALDH2の活性に個人差があり、その差が強いか弱いかを分けています。

ALDH2の活性は大きく分けて3つに分類されます。
活性型(NN型):活性が高い、つもりアルコールを分解できる、酒に強いタイプ
低活性型(ND型):活性がNN型の1/16しかない 少しはお酒が飲めるタイプ
非活性型(DD型、いわゆる下戸)活性が全くない 全くお酒を受け付けないタイプ

白人や黒人はほぼNN型、つまりお酒を飲んでも全く酔いません。
お酒が飲める日本人の約半数が活性型(NN型)、半数弱は少しお酒が飲めるND型(低活性型)です。肝臓に「強い、弱い」はありません。
処理能力が一定なら、問題は飲む量です。
とくにND型の人はほどほど飲める体質、無理に強くなろうとせずに適量つまり、自分の肝臓が分解できる以上のアルコールを摂取しないようにすることが重要です。