院長コラム
そのお尻の拭き方、膀胱炎のリスクになるかもしれません。
日本人の60歳以上の約8割が①失禁、尿意切迫感、頻尿などの蓄尿症状、②尿勢低下、腹圧排尿などの排尿症状、③残尿感、排尿後尿滴下などのなんらかの下部尿路症状を有していると推定されています。しかし、その中で受診するのは2割に満たないとされており、受診される多くは症状を有する女性です。
女性は男性に比べて膀胱炎になりやすい理由として
女性が膀胱炎になりやすいのには、女性特有の体の構造や機能が関係しているとされています。
- 尿道口のそばに膣や肛門があり、細菌が付着しやすい
- 尿道が短いため、細菌が膀胱に逆流して侵入しやすい
- 性交により細菌が侵入しやすい
- 生理中は経血によって外陰部の清潔が保たれにくい
- 妊娠中は免疫力が低下しやすく、おりものも増えがちになるため細菌が繁殖しやすい
などの理由が考えられています。
女:男=5~6:1の割合で、女性は男性の5倍以上も膀胱炎になりやすいとされています。
多くは20歳代と閉経前後の中高年期にピ-クがあります。
日本からの排泄後の肛門部の拭き方と尿路感染症(膀胱炎を含む)の発症リスクとの関連を検討した横断観察研究が報告されました。報告では、発症率は男性と比べて女性で有意に高く、女性の約半数が両足の間に前から手を入れて後ろから前に向かって拭いており、40~59歳の中年女性ではこの拭き方がUTIの危険因子になりうることが初めて示されました。(Cureus2024; 16: e58107)
今回の研究では温水洗浄便座の使用の有無ついて考慮されていない点が問題点としてあげられていますが、リスクの高い世代はぜひ前から後という拭き方が良いという実践しやすい結論を導いた点で、インパクがあると個人的には考えます。