院長コラム
タバコとがん(電子タバコと加熱式タバコの違い)
男性の喫煙率は減少傾向で、2019年に27.1%となっています。女性の喫煙率は、10%前後を推移しながら横ばいからやや減少傾向になり、2019年では7.6%です。健康意識の高まりならびに増税により、約30年間で低下してきましたが、近年は下げ止まりの傾向にあります。
加熱式たばこは、喫煙者の20%以上が使用しており、特に若年20~30代(男性約40%、女性約50%)の使用が増えています。喫煙率が下げ止まりの理由の1つとして加熱式たばこの普及があるとかんがえられています。
たばこを吸わない人間は間違えやすいですが、電子タバコ、加熱式タバコ違いはタバコ葉の有無です。
電子タバコ:タバコ葉(なし)
加熱式タバコ:タバコ葉(あり)
タバコは加熱をすることで有害物質がでます。
電子タバコには3大有害物質であるニコチン、タール、一酸化炭素は入っておりません。
電子タバコのリキッドの主成分は、プロピレングリコール(PG)や植物性グリセリンなどのグリコール類のため安全と考えられてきましたが、2019年米国で加熱式たばこによる急性肺障害(胸部X線やCTで異常な浸潤、かつ低酸素血症)のアウトブレイクならびに死亡例が報告されました。有害物質が少ないことが必ずしも安全であるとは言えない事例です。
電子タバコはニコチンパッチよりも禁煙率が高く(紙巻きたばこを1年間禁煙できた人の割合、ニコチン代替品(ニコチンパッチ)群:9.9%、電子タバコ(VAPE)群:18%)、禁煙補助に有効であったというRCTの報告(N Engl J Med 2019; 380:629-637)もあり、禁煙の一手段として、また若年層での喫煙習慣へのゲートウェイとなっている点が問題とされています。
加熱式たばこの長期使用による健康被害については、紙タバコと異なり歴史が短いため科学的エビデンスに乏しいのが現状ですが、これから少しずつでてくる最新情報をお伝えできればと思っております。