院長コラム
最近物忘れがひどいんです・・・それって「認知症?」「うつ病?」
年齢を重ねていけば、誰でも記憶力は低下します。人の名前がなかなか出てこなかったり、物を置いた場所がわからなくなったりするなどの物忘れは誰でも起こりえます。大半は「そうだった、忘れてた」と本人は忘れたことの自覚があります。
もの忘れが病気の症状の一つとして出る代表的なものとして「認知症」「うつ」が挙げられます。
医学的には認知症の「記憶障害」、うつは「記銘力低下」です。
うつ病に伴う物忘れは、記銘力(新たな事柄を覚える力)の低下です。たとえば、新聞を読んでも内容を覚えていなかったり、仕事で打ち合わせをした事が頭に入らなかったりします。一方、認知症はすでに経験済の記憶がごっそり抜け落ちてしまいます。例えば、朝食で何を食べたか、食事をとったこと自体を全く思い出せないこともあります。
うつ病には「もの忘れ」以外にも「頭が回らない」「ミスが増える」「集中できない」「気分の落ち込み」といった症状も目立ちます。ひとによっては、肩こり、頭痛、腹痛、腰痛などの身体的な症状のみが前面にでる場合もあります。
うつの多くは誘因となるストレス(大切な人やものを失った喪失感、環境の変化、人間関係のトラブル、健康面や経済的な不安)があります。うつは「心の風邪」と言われることがありますが、これは「風邪のようにすぐに治ってしまう」という意味ではなく、「風邪のように誰でもかかる可能性がある」という意味です。
近年の研究では、うつ病は心の病ではなく脳の病であることが知られるようになりました。現在では脳内神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの働きが弱まることことが、発症に強く関連していると考えられています。セロトニンは気分や覚醒リズムに関わる重要な脳内の神経伝達物で、セロトニンを増やす薬がうつ病の治療薬として広く使用されています。また日本からの報告で、最近ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)解析した結果、幼少期からヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が持つ遺伝子SITH-1が、うつ病発症の原因となることが報告されました。
HHV-6Bは突発性発疹として発症する原因ウイルスで、ほぼ100%のヒトに潜伏感染していると言われています。HHV-6Bは脳神経に親和性の高いウイルスで、さまざまな脳神経疾患や精神疾患との関連が疑われています(iScience2020)。もちろん、単一の遺伝子異常のみで発症するわけではないので、きっかけとなる環境因子、ストレスの関与も重要です。
誰でもなりうる風邪だからこそ、予防できる手立てがあるならぜひ医学の力で解明されていくことを期待したいです。