院長コラム

腸を整えるは科学的根拠がある──プロバイオティクスの免疫調整とバリア強化作用


腸内フローラと「プロバイオティクス」の役割

近年、腸内環境の乱れ(腸内細菌叢のディスバイオシス)が、さまざまな疾患の引き金になることが明らかになってきました。なかでも炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(UC)クローン病(CD)では、腸内細菌の構成が健常者と大きく異なり、慢性的なディスバイオシスが存在しています。

このような中、注目されているのがプロバイオティクス(健康に有益な作用をもたらす生きた微生物)の投与です。


炎症性腸疾患(IBD)と腸内細菌の違い

  • 潰瘍性大腸炎:腸内フローラは健常者に比較的近い
  • クローン病腸内細菌叢が大きく乱れており、ディスバイオシスが慢性化・定常化している

このため、クローン病では日常的・継続的なプロバイオティクス補充が重要とされます。


プロバイオティクスの主な作用メカニズム

① 病原菌のブロック機構

  • 粘膜表面への病原菌の接着阻止・定着阻害
  • 病原体の上皮細胞内への侵入を防ぐ
  • 腸管内pHの低下による病原菌の生育抑制

② 抗菌物質の産生と拮抗作用

  • 乳酸、酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生し、有害菌の増殖を抑制
  • バクテリオシンなどの抗菌物質を分泌し、競合排除を促す

③ 腸粘膜バリアの修復・強化

  • 粘液産生の促進
  • タイトジャンクションの修復と強化により、腸管透過性(リーキーガット)を抑制
  • 上皮細胞の再生促進

④ 免疫応答の調整(抗炎症作用)

  • 抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-β)の産生を促進
  • 炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)の抑制
  • CD4陽性T細胞の過剰反応を抑制
  • Treg細胞(免疫寛容)や樹状細胞の増加
  • 分泌型IgAの産生促進により、腸管免疫を強化

実臨床での臨床的効果

潰瘍性大腸炎(UC)

  • 寛解維持期にプロバイオティクスの投与で再燃率を下げる報告あり(例:ビフィズス菌、ラクトバチルス属)

クローン病(CD)

  • 抗炎症薬・免疫調整薬と併用し、粘膜バリア再建や症状安定化に補助的効果が証明

プロバイオティクスは単なる“サプリメント”ではない

IBDのように腸粘膜の慢性炎症や免疫異常が関与する病態では、腸内細菌へのアプローチが極めて重要です。ただし、効果は製剤の種類や個人の腸内環境に依存するため、消化器内科専門医と相談のうえ投薬を決めていくことが重要です。ぜひ炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者さんはご相談にいらしてください。